ATC SCM7

前回に引き続き、現在のザ・ステレオ屋リファレンスモニターのもう一角となるモニターのレポートです。

【速攻のHAYDN vs 堅守のSCM7】
何となくそんなフレーズを書きたいような気になったので書いてみましたが、俊敏で鋭利でキリッとしたHAYDN(S-1G)に対し、安定感やバランス感が良く、力強くもあり穏やかさや包容力のあるようなサウンドであるのがSCM7です。

そもそも、ATCというブランドは一頃前まで「鳴りも(重量も)重く、大変なアンプ喰い」というのが定説であったくらいに「吹き出すような鳴らし方」をするのが大変なブランドでした。
僕個人の経験談や印象としては「(今回紹介しているSCM7とほぼ同じ大きさ/価格の)もっとも小型なモニターでさえ、300W~500Wも出せるような大型なパワーアンプでドライブしないと鳴ってくれない。」…といった印象で、当然アンプの価格がモニターの数十倍になってしまうので「随分身の丈に合っていないモニターだなぁ…。」と思いつつ、(ハイスピードを好む僕としては)かなりの投資をしなければ思い描く音にならないため、なかなか選択肢にすら入っては来ませんでした。

しかしながら、上手にドライブできるアンプを大前提とした「ハマった流れ」を作れた時の“分厚くも明瞭で、大胆ながら精密”といったサウンドがとても印象に残っていて、決して嫌っていたりしたブランドでもなかったことを覚えています。

…それから少し年月が経って、ある時の製品発表会でのことです。
正直言って最初の印象は「カッコ悪くなったんじゃない?」としか覚えていない、まるでマスクをしたような新型が登場したのです。
でも、(中身が良かったから?)一気にカッコ良く見えはじめたのは、そのヴェールを何枚も何枚も剥がしたような音。
思わず、「はじめっからコレ作っておけばいいのに!」と思ってしまった(言ってしまった)かもしれません。

その音は、今までのATCブランドに抱いていた既成概念をさっぱり忘れ、いつか思ってたATCにしか出せない理想に近かったのです。
その後すぐに店頭に迎え入れ、より好みに追い込むことが出来ることを確信し、気が付けばリファレンスの一角を担うモニターとなりました。

冒頭の通り、S-1Gとは別の性格であり、良い意味で好対照ながら(黒江が好みそうな)共通点も多くあります。
特徴を幾つか挙げていくと…
もちろん、基本的にはハイスピード。([S-1G]や(殿堂入りの?)[PMC LB1]にはもうちょっと及ばないけど。)
低域がタイト。(且つS-1Gには無い深さがあって、5弦ベースなんかもしっかりと聴き取れる。)
定位が良好。(クリア/繊細といった要素が先に来るS-1Gよりも、こちらの方が音の存在感は強い。)
帯域がフラット。(高域が走ったり、低域がもたついたりという印象は受けません。)
力感のあるサウンド。(やや芯は太め、肉付きも筋肉質な感じでしっかり、雄々しく、骨太で、パワーのあるサウンド。でも荒っぽくない。)
…と、こんなところでしょうか。

ちなみに、Yahoo!ブログにて番外編を書き続けている「僕の弟分であり、ドラマーであり、もちろん熱心なオーディオユーザーであるS君」はSCM7の方が(僅差で)お気に入り。僕は僅差でS-1Gがお気に入り。
(ウチで試聴をされて)購入される確率もほぼ五分五分で、
(メタルも聴くけど)ハードロックやジャズ、プログレッシブも好まれる方はSCM7を、
(ロックも聴くけど)ヘヴィメタルが中心で、Jポップやエレクトロニカ(テクノ)も好まれる方はS-1Gに軍配が上がりやすい傾向です。

が、「あの曲はあっちの方がいいんだよなー。」と最後まで後ろ髪引かれている方をよく見かけます。(笑)

…いや、本当にどっちも良いモニターなんですよね…。僕もどっちも欲しいです。はい。

http://www.electori.co.jp/atc/SCM7.pdf

商品のお問い合わせ/ご注文/その他は黒江直通メールにてお願いします。
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