CHORD DAVE

今回は久しぶりの(高額)ハイエンドモデルではありますが、個人的に高く評価させていただいたモデルとなりましたので特別編としてレポートしたいと思います。

【広大で透き通るサウンドステージにふっと音が沸き上がる。】

まずはじめに、このDAVE(デイブ)というD/Aコンバーターは汎用のDACチップを使用せずにFPGAという独自のプログラム(処理)を走らせて「デジタル→アナログ変換を行っている」という一般的な製品とは一線を画するポジションの製品であることがアイデンティティであり、魅力であることが大きな存在感となっています。

そのこと(汎用DACではない)がどういうことなのかと言うと、(音源の)デジタルデータは“0”か“1”であり、わずかコンマ何秒の音を作るためにデジタル(データ)をアナログ(波形)に変換する小さな回路をDAC(チップ回路)と呼ぶのですが(例えば“1010101010101010”というデータをDACに入れると“ザッ”という音に変換れて出てくる)、このDACチップというものが全世界で数社から製造され、ほとんどのオーディオ(音が出るものはすべて)メーカーがいずれかのDACチップを採用し、搭載しています。
(オーディオで有名どころなDACチップのメーカーは[]内は傘下企業等、Texas Instruments[Burr-Brown]/旭化成/Cirrus Logic[Wolfson]/ESSなどがありますが、それぞれのチップメーカー毎に(同じデータを入力しても)少しニュアンスの異なる音の出力が得られるということが一般的です。※もちろん、同じデータから出てくる音(ピアノ・ドラム・ギター・ボーカルなど(の混声))は基本的には全く同じ音です。)

これに対して、CHORDのDAVEはFPGAという(中身のプログラムが書き換えられる)マイコンやCPUのようなチップを独自でプログラミング・設計し、汎用DACの代わりに用いています。
言わば、同じデータから他のどのメーカーとも異なるニュアンスの音を取り出すことができ、唯一無二のサウンドを再現・表現できるということになります。

ただし、黒江が評価したのはこの“唯一無二”“独自”“アイデンティティ”などといった点ではなく、そのフィロソフィーと言いますか、(汎用DACでは聞かれない)デコード(演算)への考え方・取り組み方です。(仔細は割愛します。)
端的に言えば、“聴き心地のいい音”や“美しい音”ではなく、“より正しい音”や“録音に忠実で鮮度の高い音”を目指されているという面です。

…ということで、いつものレポートに入りたいと思います。

■CHORD [DAVE]
●まず目を見張るのが、S/N感の高さです。1音1音にも、広がるサウンドステージにも雑味が感じられません。
●フッと(静かに)沈み込む低音から、きれいに昇華する倍音までレンジの広さは当然のように自然なレンジ感を持っています。
●歪み(っぽさ)が(今まで聴いてきたなかでも)極限的に低く、少なく感じられ、どんな音もスーッと耳に入って(耳の中で暴れたり、絡まったり、溜まったりせず消費され)吸い込まれてゆくような感じを覚えます。
●伴って(1音1音の)分解能も非常に高く、(サウンドステージの)解像度もハイレゾリューション。音と音の存在感を感じつつ、本当に透き通るような見通しが魅力的です。
●音の濃淡は少しパステル拠りで、原色ギトギトといった傾向ではありません。やや艶感もあり、少しウェットな路線と思います。
●スピード感・キレ・抜けは上々ですが、(黒江が好むような)ハイスピード系と比べると少し減速したポジションです。ただし、これは音が“スムース過ぎるあまりに少しゆっくり聴こえる”(猛スピードで動いていると周囲が止まっているように見える)ようなこととの影響も考えられ、局面(出音)によってはスピード感が増減するような印象が残りました。
黒江的好み度:採点不能

一見すると“美音系”のように思われるかもしれませんが、あくまで“解析的”なサウンドであり、どんな録音も正しく再生・再現するという基本線を持っているのは賞賛の一言に尽きます。

…ということで、久しぶりに極上サウンドと呼べるような製品に出会い、「好む好まないを超えて高く評価したい」と思わせてもらいました。
アタック音が、インパクト音が、畳み掛けてくるマッシブさが、アグレッシブさが…とはなりませんが、少し遠目でステージを見るような再現性は非常に優秀で、決して“超メタルに合う”サウンドではありませんでしたが“メタルもなかなか良い”とは自信を持って言える相性であり、ディストーションサウンドなども非常にきれいに再現されていたのが印象的です。
もちろんもちろん、歌物やPOPSは文句のつけようがありませんし、ストリングスやアコースティックなども非常に優秀でした。

『高嶺の花』ではありますが、機会があればぜひ聴いていただきたい一品(ひとしな)でございました。

P.S.
黒江は宝くじでも当たればサブ機として買わせてもらいたいな…と。
&こういうのがじっくり聴けるのは役得でございました。(笑)

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