Aura vivid Premium Black Edition

7月 18th, 2019

今回はAuraのLimitedモデルをレポートさせていただきます。

【鮮やかに、鮮烈に、鮮明に。】

まず結論から述べますが、前回のTEAC AP-505に続いての大プッシュモデルになっております!(続くときは続きますね。)

限定モデルということで、しっかりとしたレポートを書くことに少々迷いもあったのですが、今となっては数少ないCDプレーヤーのプッシュモデルとなりますので意を決しました。
(なので、後々このエントリーを読んでいる方、すでに入手は困難かと思われます…。)

…と、まずは今回のvivid Premium Black Editionのベースとなったノーマルのvivid(and vita)のレポートも参考にしてください。
http://www.digitalside.net/?p=667

以前のvividは『ハイスピードだけれど低音が明らかに薄め』であり、ちょっと物足りないサウンドではあったのですが、変化はあったのでしょうか…。

■Aura [vivid Premium Black Edition]
●元祖vivid(↑)でのよかったポイントはそのままにしっかりと継承されております。(その上で以下に続きます。)
●いわゆるハイスピード系であり、ハイスピードの中でもかなり上位に位置します。(“超”が付くほどではありませんが…。)
●帯域バランスは(元祖vividで薄かった)低域までしっかりとフォローされ、高音までバランスのよいサウンドとなっております。
●S/N感・分解能も上々であり、1音1音がシャープかつ鮮明に実像感の高い鳴り方をします。
●(輪郭線は細いながらも)エッジ感があり、立ち上がりも鮮烈で、「ビシッ」とクイックな印象を持ちます。
●(TEAC AP-505で「アグレッシブにハイスピードが溶け込んだ」と喩えましたが、vividは逆で)ハイスピードをベースにアグレッシブが絶妙に溶け込んだようなサウンドであり、緩みや丸みを含ませない“「無」付帯音系”の属性です。
○こじんまりとしたサンドステージではありませんが、大きな広さはなく、比較的タイトな音場感となります。
○S/N感・解像度は高いクオリティを見せながらも(クラス上のモデルに比べてしまうと)“超”が付くようなレベルにはあらず、価格帯なり(以上には感じられますが)の中では優秀な方かと思われます。
○もっとも注意していただきたいのは「ただのCDプレーヤー」であることです。USBも無いですし、SACDなども再生できません。
黒江的好み度:S

…と、(16bit/44.1kHzの)CDプレーヤーとしては最後?の(黒江的)名機指定と言っても過言ではないプレーヤーです。
vividという言葉が、鮮やか・鮮明ということは理解していましたが、他にも「目の覚める(ようなサウンド)」であったり、「はつらつ・躍動感(も持ち合わせている→鈍足サウンドには出せない)」などの意味もあり、正に『名は体を表す』でありますし、設計者がちゃんと名前に沿った音を作れる(その逆で音から名前を考えたのかな?)のがすごいな…と思わされます。
(「明るく輝く」という意味もありますが、明るさ・派手さはそんなには無いかな…。)

(毎度恐縮ですが…^-^;)メタルだとギターの歪み、シャウト系のボーカルは抜群であり、シンバルや金物の「キンキン」感や倍音なんかがとても気持ち良く耳に刺さります。(→刺さる系のサウンドです。)
すでに残数の少ない状態のようですが、ぜひぜひチェックしてみてください!(もちろん、このモデルはvitaと組み合わせなくても大丈夫です。ぜひ単体でお求めください。)

2019年、黒江の心に「強烈」に残った1台でした。

TEAC AP-505

7月 9th, 2019

前回に続いてTEACのNewラインナップをご紹介させていただきます。

【目立たず、騒がず、問答無用サウンド。】

「久々のヒットが来ました!」しかもパワーアンプです。
(※最近はDACにプリアンプ機能が付随しているものが多いので、気に入ったDACプリがより活かせるようになるし、DACプリ兼ヘッドフォンアンプからのスピーカーデビューもしやすいのでこれ以上の喜びはありません!)

前回『モニター調でガツンとくるのに決して雑にならないのはTEACサウンドの大きな魅力の1つ』と述べさせていただきましたが、正にこのAP-505も同様(以上)のTEAC気質を持ちあわせています。
そのサウンドはあのReferenceシリーズを彷彿とさせながらも、同シリーズを凌駕してくる(もちろん組み合わせるプリアンプの影響も多大ですが)といった印象であり、黒江が推奨するアグレッシブ系の新たな一角を成すモデルです。

■TEAC [AP-505]
●アグレッシブ系譜らしく、一聴してすぐにアタック感(の鮮烈さ、明瞭さ)が際立ち、スピード感に乗った音の立ち上がりが印象に残ります。
●サウンドの全景は前回のUD-505・NT-505とある程度は共通しており、タイトで帯域バランスが良く、ドライブ感の高い駆動力です。
●UD-505・NT-505に比べるとAP-505はタイトさだけに留まらず、シャープさやクリアさを併せ持っており、より引き締められて精悍なサウンドとなっています。
●抜けや切れ、スピード感も上々であり、アグレッシブにハイスピード系が溶け込んだような絶妙なポジションに位置します。
●決して華やか、艶やか、派手な分類にはありませんが、高域の伸びも良好で、低域もしっかりと最深部までフォロー、ぼやけず、ブーミーにならずに高い解像感を感じられます。
○強いて言えば少し低音の量感が多めでありますが、質の良い低音であることも手伝い、許容範囲ではないかと思われます。(周知の通り、黒江は“薄めの低音”が好きなので、人によっては“ちょうどいい”のかもしれません。)
○悪く言えば、モニター調であり、地味目で特徴的なサウンドではありません。(もちろん硬質寄りのサウンドです。)
黒江的好み度:S

…といったところですが、やはり「ガッ」「ダッ」「ジッ」といった『インパクト音』と、勢いよく放たれる『ドライブ感』は魅力的です。
繊細すぎず、シャープすぎないところからも、いわゆる男っぽいサウンドといった印象で、ハードロック・メタルにはうってつけではないかと。(もちろん女性バンドもGoodです!)
ちなみに、正面のメーターですが、ランプ・メーター(動作)共にオフにすることができるのですが、双方をオフにするとS/N感はもちろん、抜け、切れ、高域の伸びが2ランクくらい向上しますので、両方オフはマストではないかと思われます。
ランプは消灯(目立たず)、メーターは動かず(騒がず)、「男は黙って」(問答無用)といったところでしょうか。(←この状態にすると電源が入っているのかが分かり辛いので消し忘れに注意してください!笑)

久々のヒット製品、ぜひぜひご検討ください。

TEAC UD-505 and NT-505

7月 1st, 2019

今回はTEACのNewラインナップをご紹介させていただきます。

【近くで聴くか、遠くで聴くか。】

『UD-505』はヘッドフォンアンプ重視のD/Aコンバーター、『NT-505』はネットワーク対応のD/Aコンバーターといった位置づけで、DAC部分はほぼ共通となっています。

■TEAC [UD-505] and [NT-505]
●双方共通の第一印象は“TEACらしいサウンド”で、いわゆるアグレッシブ系でありつつも上々のスピード感を併せ持っています。(かなりのハイスピード~超ハイスピードではありませんが。)
●音の粒が向かって飛んできつつも面で押し込んでくる“圧”があり、たたみ掛けてくるタイプですが、粒が粗目(粗暴)になることなく解像感や分解能もしっかりと感じられます。
●帯域バランスが良く“低音が目立つ”“高域がうるさい”といった特徴的な鳴り方の少ない「モニター系」アンプの位置づけです。
●S/N感(1音1音や音場のクリアさ)も上々ではありますが、キャラクター的には『高精細&クリア系』ではなく、『アグレッシブ&ドライブ系』といった印象です。
●ヘッドフォンアンプ重視のUD-505はバランス型のヘッドホンにも対応し、名に恥じない高音質のヘッドフォン出力を搭載しております。
○UD-505はNTよりもやや低重心で、NTよりも1音1音の質量感が重め(強め)に感じられます。
○アタック音もUDの方がNTよりも「ガッ」と強めに立ち上がる感じで、NTは「スッ」ともう少しソフトに立ち上がってきます。
○NT-505はUDよりも軽い感じになりますが、「軽快・すっきり」とも捉えることができるので好み次第ではNTの方が魅力的に感じられることも。
○煌びやかさ、開放感、高い音の抜け感などはあまり感じられず、しっかり鳴る傾向のサウンドです。
(※いずれもDACやDACプリとして試聴した場合のレポートとなります。)

…といった感じですが、いわゆるアグレッシブサウンドということでロック・メタルとの相性は良好に思えました。
モニター調でガツンとくるのに決して雑にならないのはTEACサウンドの大きな魅力の1つではないかと再認識しております。

なお、2機は共通部分(部品)が多いため、ほぼ兄弟機(双子機?)と言え、非常に似たサウンドとなっておりますが、ヘッドフォンもよく使う方『近くでも聴く方』にはUDを、ネットワーク機能が欲しい方『遠くの音源(NAS)も聴く方』やUDよりも少し軽やかなサウンドが欲しい方にはNTをお勧めしたいと思います。
(NTにも簡易タイプではありますがヘッドフォン出力が搭載されています。)

JERN 12 WP

2月 28th, 2019

今回はデンマークのブランドJERN(と書いてヤーンと読む)から個性的なスピーカーをご紹介させていただきます。

【鉄ダルマから放たれる破壊的サウンド。】

まるで雪だるま(達磨)のような個性的なフォルムだけに非ず、頭に「鉄」と付けたようにエンクロージャー(筐体・キャビネット)が鉄製であることも非常に大きな特徴です。
(片方12.2kgとなかなかの重量ですので、取り扱い、落下などには注意が必要です。)
このフォルムとマテリアルから繰り出されるサウンドは、まさにナンバーワンよりオンリーワンといった感じであり(変態ものによくある、ユニークさ優勢ではなく)クオリティも十二分に持ち合わせているのでぜひ注目していただけたらと思います。

■JERN [12 WP]
●超繊細といった印象は薄いのですが、S/N感・分解能(解像度)など基本的音質は十分なレベルにあります。
●当店的な系譜で示すといわゆる「アグレッシブ系」に属するタイプであり、リスナーめがけて音が襲い掛かってくるような突進系のサウンドになります。
●1音1音はタイトでありますが、シャープ過ぎる傾向ではないので硬質過ぎず、エッジ(音の輪郭が)が立ちすぎないイメージです。
●鉄製キャビネットということで「キンキン・カンカン」の超寒色系かと思いきや、そこまでオーバーな描写は無く、意外にも自然な発色(発音)を感じさせてくれます。
●無駄な余韻が無く、キレや立ち上がりは極めて秀逸であり、音像感が強めでハッキリとしたサウンドを得ることができる傾向となっています。
●スネアやバスのインパクト音、皮のアタック音、ディストーションギターの巻き弦のピッキング音などなどが非常にリアルであり、小気味よく、ノリよく聴かせてくれます。
○前面に張り出すようなサウンド感であるため、縦方向や奥行きを使って大きく描いてくるタイプではありません。
○高音域の上の方、低音域の下の方はやや抑え気味となっています。
○特徴的にも微細音・微小音を(拾って拾って)聴かせようとする傾向ではありません。
黒江的好み度:A+ (~-S)

ほぼ「S」と言ってもよいくらいですが、(試聴時間に限りがあり)詰め切れていませんでしたので暫定的に「A+ (~-S)」といたします。

鉄を使うことによって、その剛性さと自重を利用し、キャビネットでフィジカル的にユニットを押さえつけて不要な振動を制御し、且つ(キャビネット全体が振動してしまう、いわゆる)箱鳴りを極限まで抑えることによって得られるそのサウンドは正にオンリーワンのサウンドでした。
リスニングポイント(左右のスピーカー間)の外側ではかなり音量が落ちることからも箱鳴りがほぼ無いことを実感させてくれます。もちろん後方にも音漏れがあまり無いため、狭所での壁際設置にも強そうであり、スピーカーの(首振り)確度によってもステレオ感や広がり、音像感の調整が充実しそうなモデルです。
重さと強度でユニットを押さえつけ、ユニットだけが鳴るようなイメージなので2wayにも関わらず(点音源となって)シングルっぽさもあるのが更に魅力を感じるところでしょうか。

魅惑の鉄ダルマ、なかなかのプロダクトの様です。ぜひご検討いただけると幸いです。

MERIDIAN 218

1月 31st, 2019

今回は英国の老舗ブランドMERIDIANからの新製品をレポートいたします。

【プレーンなサウンド、モダンなスタイル。】

(まるでFAやトレードを繰り返すように)MERIDIANというブランドはその所属を転々としておりますが、英国のオーディオブランドとしては息が長く、その昔からデジタル系にも長けたメーカーです。
その時代時代に於いて最先端なプロダクトを投入してきている同社から、今回もお得意の新製品が登場しました。

なお、本機は「Zone Controller」と名付けられており、位置付けとしてはプリアンプということのようですが今回は単体DACとして使用した際の検証となっております。

MERIDIAN [218]
●基本的音質であるS/N感・解像度・レンジ感などは、いずれも上々でCP面に於いても申し分のない音質となっています。
●当店が呼ぶところの「ハイスピード・アグレッシブ」には属しませんが、鈍足ではなく、マイルド調でもなく、中速(~ややハイスピード寄り)で高精細なサウンド傾向にあります。
●全体的に「バランスが良い」「ニュートラル」「少しウェット」といった印象があり、モニター調ではないけれど“オーディオオーディオとした音作り”にも非ず、黒江的には“プレーン”というキーワードで述べさせていただくことにいたしました。
●音への“化粧感”をあまり感じさせず、癖の少ない傾向ではありますが、ストレート・スタンダードといった表現とはちょっと異なるイメージで、“素材の味がよく活かされている(味付けをしていないとは言っていない)”サウンドとなります。(なので、チョコ味でもストロベリー味でもなく、プレーン味だと。)
○広がりのあるサウンドではありますが、少し平面的であり奥行き感はあまり高くありません。
○(エッジ感・ソリッド感が無いため)全体的にやや穏やかに感じられる音調ではあります。

…といった感じですが、音に癖を付けたくないけれど、鮮明なエッジ感や、音の切れ、(聴いていて疲れるような)シャープさが強いのはちょっと…と思われる方にはかなりベストな選択肢になりそうです。

なお、本機は基本的にアプリ操作を前提に作られており、本体にはボタン等を設けず(見た目もプレーン)に旧来のオーディオとは一線を画します。
余計なものは付けずに、その分コンパクトに設計された思想には新たなユーザーへのメッセージが込められているような(…気がする)良プロダクトだと思います。

MQA再生も好印象であり、リップシンク機能やroonへの対応、他種のデジタル入力と“デジタル・マルチ・プラットフォーム”と言える多機能デバイスです。
音質面・機能面を総合したCPはかなりの高評価となる1台となっておりますので、ぜひご検討の1つに加えていただければと思います。

SOULNOTE A-2

12月 18th, 2018

ちょっと遅ればせながらになりますが今回はSOULNOTEのフラグシップアンプA-2をレポートさせていただきます。

【圧倒的、弩級サウンド。】

結論から述べますと、当店的な表現で言うところの“アグレッシブ系”サウンドにあたり、旧PRIMARE・旧PASS・TEACなどのガツンと押しの強い傾向に分類されます。
そのため、シャープさ、(鋭利な)キレ、(透き通る・突き抜けるような)抜け感の高い傾向には無く、(当店的に)アグレッシブと対を成す“ハイスピード系”ではありません。(もちろん鈍足ではありませんが。)
しかしながら“アグレッシブ”系統においては頭1つ抜きん出るクオリティと確立されたキャラクターを伴い、(価格に十二分見合った)非常に完成度の高いアンプとなっております。

■SOULNOTE [A-2]
●まず特筆すべきは群を抜くパワー感となりますが、パワー一辺倒には無く、非常に高い情報量を十分な解像度で展開し、高密度と高精細さを併せ持っています。
●S/N感・レンジ感・音の立ち上がり&収束などいずれも上々であり、スピード感も(ハイスピード系の中では下位になりますが)上々のサウンドとなっております。
●サウンド傾向を形容すると『やや強めのアタック音が小気味良く立ち上がり、ズドンと駆け抜けて行く』ような印象で、無数の音のつぶてを体全体で受け止めるような感覚を覚えます。
●(黒江が好むものにしては)音の温度感がやや高く、ウォーム傾向ですが「暖かい、温いといったウォーム」と言うよりは、「熱い、激しいのホット(HOT)」の方が合いそうな『カッとしたギラつき』を垣間見る印象があります。
●帯域バランスも良好であり、高域~低域に掛けて音に緩みが無くストレートにタイトにしっかりとした出力が安定したドライブ感で得られます。
○高域(超高域)が少しおとなしめになりますので、輝度や派手さは控えめになる傾向です。
○「ギラつき」「アグレッシブ」に含まれる激しさを(黒江的には良い方向に解釈できましたが)、やや荒々しいと感じる方がいるかもしれません。
黒江的好み度:A (~A+)

…ということで、一聴してすぐに「おおっ、(良い)アグレッシブ系来たな」と思わせてくれるような、ストレートに迫り来るタイプのアンプでした。

ちょっと脱線しますが…
この、1音1音が“突進”してくるような感じ、どこかで…と記憶を辿ってみると、(前述の旧PRIMARE・旧PASS・TEACを経て)『SON OF AMPZILLA 2000』だ!と気づきました。
(…となると、このA-2は“和製AMPZILLA”と言えるワケですが、ゴジラは元々和製なので本家AMPZILLA?が正解なのかな…。笑)
あの(2つと無い個性を感じた)名機を彷彿とさせてくれたのは今までに無かったことでありますゆえ、特筆させていただこうかと思います。

更に、もう1つ付け足しておきますと、このA-2はパワーアンプとして使用出来るようになっており、そのパワーアンプとしての性能が非常に高いです。(→パワー部だけでも価格に見合っていると断言できるほどです。)
“好み度”の(~A+)は好みのプリアンプとの接続時であり、ハイスピード系のプリアンプと組み合わせることでスピード感やキレが増し、非常に良好な結果となりました。
(一先ずは単体プリメインで使用し、後にプリアンプを足すのも良いプランですね。)

久しぶりに現れた“突進系”の名アンプではないかと思います。ぜひ試聴等されてみてください。

P.S.
個人的にもう1つ述べておきたいのは、このアンプで聴くシャウト系…特にデスボイス(グロウル)が秀逸であるということです。
黒江的には『KING of DeathVoice』の称号を与えたいかな…。(そっち系の人にしか理解できませんが。笑)

Nmode X-DP7

11月 13th, 2018

今回はNmodeからの新製品DACをレポートさせていただきます。

【テクニック?マジック?まさかの異次元変化!?】

結論から述べますと(今年最後の?)個人的には「大ヒット」のサウンドでありました。 …が、黒江の好むサウンドについては“ある条件付き”となっておりますので総括で述べたいと思います。

■Nmode [X-DP7]
●(価格が価格だけに)S/N感・情報量・解像度などの基本的音質はおおむね良好であり、高い定位感やバランスの取れたサウンドで安定感を感じさせる仕上がりとなっています。
●アタック感と音の切れが良く、当店の形容で言うとアグレッシブ系に属しますが、上々のスピード感も持ち合わせています。
●鳴りっぷりの良い傾向であり「バキッとした・ガツッとした」というマッシブな印象ですが、(太さのある)大きなマッチョ感ではなく、痩せマッチョ感でもなく、中肉中背のマッシブさなので強い癖や個性を押し付けてくる感じではありません。
●余計な付帯音が無く、モニター調で堅牢・堅実感を感じさせるサウンドです。(悪く言えば無難とも言えますが、アグレッシブ感があるので素っ気ないサウンドではありません。)
●バスドラのアタック感、巻き弦のゴリゴリ、シャウトは喉奥の擦れ、ブレの無いベースサウンドとしっかりとまとまったサウンドステージを描いてくれます。
●通り抜けるような音抜けではありませんが、1音1音の収束が早いので、もたつきや音同士の重なりやぶつかりの無いクリアな見通しとなっています。
○強いて言えばやや高域方向が抑えられている印象であり、(金物などの)音の輝度がやや低めでその分重心の低いサウンドとなっております。(そのため派手さはありません。)
黒江的好み度:A+ (~A)

…ということで、久しぶりにDACの良作に出会えたと思っております。 …が!↑前述の通り、“ある条件付き”となるのですが…
上記のレポートは総て(当店にしては珍しく?初?の)『DSDモード』でのものになっております。

黒江の好みですと、アップサンプリング・アップコンバートなどは大抵オフ設定の方が好みでもあるし、音質の評価も高いのですが、本機に関しては今までの真逆の結果となりました。
(尚且つ、CDプレーヤーからの変換ということで「PCM→DSD」とD/A変換の方式まで変わったサウンドに惹かれるなんて…。ちょっと意外です。)
しかしながら、「すべては出音で判断すべき」というポリシーもあり、このようにまとめさせていただきました。

アップサンプリングOFFのサウンドはアグレッシブさなどが無くなって印象はかなり異なります。
アップサンプリングのON/OFFでこれだけ音が変わってしまうのも、どうなのかな?(構造が)どうなっているのかな?と思えるところもありますが、逆に言えば2つのサウンドを1台で楽しめるとも言えるので決して悪いことでもないと思います。
試聴の際は、ぜひON/OFFで試聴していただければと思います。

Pioneer UDP-LX500

10月 23rd, 2018

今回は(大した謎ではなかったけど…)謎のティーザー広告を経て登場した、PioneerからのUltra HD Blu-ray対応プレーヤーをレポートします。
…ですが!いつぞやと同様に当ブログではあくまでも(DIRECTモードにしての)SACD/CDプレーヤーとして“のみ”のレポートになりますので予めご理解の上ご覧ください。

【画に(も)なるユーティリティプレーヤー。】

まずは(一番気になるところだと思いますので)結論を先に述べさせていただこうかと思いますが、CDプレーヤーとしての実力(価値)は大体10万円くらいの専用機に匹敵すると考察いたしました。
(シビアに言えば8万円半ば~9万円くらいかな…という感じですが、(機械物は相場変動もありますので)大体ということで。)

結論だけで言いますと、画の再生ができるプレーヤーとしてはかなりの高水準であり、「画ものも観たいけど普段使いは音だけ、でもスペースも無いからプレーヤーは1台にしたい」といったユーザーには朗報ではないかと思われます。
(↑補足しますと、この手のユニバーサルプレーヤーのCD再生音質は価格の半分以下くらいのものが多いので、目減りが少なくてお買い得ということです。)
(考察を述べますと、パネル正面の好位置にDIRECTモード用のボタンを設けるあたりからしてもCD再生のクオリティに関しては高い意識があったのかな…と。)

■Pioneer [UDP-LX500]
●S/N感を筆頭に各種の音質が上々にまとめられており、どんなジャンルでも無難に鳴らせそうな感じです。
●かなりのハイスピード!とは言えませんが、上々のスピード感があり、音のキレ、帯域バランス、音像定位などなどがそつなく揃っています。
●低音のぼやつき、膨らみなどが無く、全帯域に渡って緩みのない、しっかりタイトなサウンドとなっております。
●基本はモニター調でありながら、わずかに寒色より、硬質よりのポジショニングに在りますが、ストレート・ニュートラルといった形容で問題の無いサウンドです。
●比較的バシッと鳴ってくるので、当店的に言うと少しアグレッシブ系になるのかな…というイメージです。
○無難にまとめられた印象の一方で、レンジ感は少し控えめ、特に高音の伸びはあまりなく、無理をさせていない感じです。(Pioneerのサウンドはやや明るいイメージがありましたが、高音が抑えられているので派手めの音ではありません。)
○上々の解像度、分解能はありますが、高解像度、高分解能とは言えず、少し目の粗さを感じるところも。
○非常に悪い点として、動作反応・操作反応がとても遅いことが挙げられます。

…といった感じで『モニター調でアグレッシブながら、上々のスピード感(キレ)を感じさせる。けど、癖の少ないバランス型』といったところでしょうか。
軟らかさ、しなやかさ、ウェット感など、音楽的な個性は感じられないので色付けや味付けを求める方には不向きですが、“ソースの音をそのままに”といった方には悪くない選択肢だと思います。
『映画も観たい、ライブビデオも観たい、アニメも観たい、でもやっぱりCDを手軽に気軽に高音質で聴きたい。』そんな方へはぜひご検討をお勧めさせていただきます。

marantz SA-12 and PM-12

8月 28th, 2018

marantz SA-12 and PM-12は↓こちらからお求めいただけます。
『ザ・ステレオ屋 オンラインショップ(BASE店)』
https://digitalside.thebase.in/

今回は話題の新製品をレポートさせていただきます。

【正統派ハイクオリティ&エレガンス。】

marantzが新たなフラグシップラインとなるSA-10とPM-10を発売し、非常に高い評価を得たのは数年前のことになりますが、この度“満を持して”投入してきたのがそのフラグシップ機の弟分となるSA-12とPM-12になります。

この場合の弟分は=ローコストモデルとも置き換えることができますが、(“新たなフラグシップ”が登場する際の多くに、新たなデバイスやテクノロジー・ノウハウが投入されますが、)今回のSA-12・PM-12は主要部をSA-10・PM-10から数多く引き継いでいます。

つまり、(フラグシップ=兄貴分が先行してからの)弟分というものは新たなものを効率良く生産できるようになったり、歩留まりが向上したり、低コストで同等に近いものが生産できるようになったことから生み出される産物とも言え、コストパフォーマンス的は優位であると考えるのが自然となります。
(なんて、結構期待含みで聴くことになりましたが…笑)はたしてその実力は…

■marantz [SA-12 and PM-12]
●CDプレーヤー、アンプに共通する点として、高い解像度、クリアな見通し、バランスの取れた音調(帯域・位相・音色傾向)が挙げられます。(「高域が硬く、低域が緩い」などが無く、「高域がウェットで低域がドライ」なども無く、全体域で音調が揃っています。)
●広大に拡がるイメージではありませんが、閉塞感はまったくなく“自然な広がり”があります。特にCDプレーヤーは伸びが感じられ、(くどさの無い)自然で上品な余韻が感じられます。
●高い解像感があり、音の位置関係・定位感に優れた「ブレの無い音場」を描きます。
●アンプと共通しない点として、CDプレーヤー(SA-12)は高音の伸びがしっかりめとなり、全体的に少しウェットな“やや大人しい印象”となります。
●CDプレーヤーと共通しない点として、アンプ(PM-12)は低音の伸びがしっかりめとなり、全体的に少しドッシリな“やや厚みのある印象”となります。
●そのため、SA-12とPM-12を組み合わせることで“よりバランスの取れた”サウンドとなり、marantzの狙い通り(?)なのではないかな…と考察しております。
○鈍足傾向ではありませんが、スピード感は上々という位置付けで、抜けやキレを出してくるサウンドではありません。
○バシッと向かってくる、飛んでくる傾向にもないため、パワー感やアグレッシブさを要求するのは難しそうです。

…ということで、“美音系”とまでは行きませんが、良い意味で“準美音系”(美音も過ぎると厚化粧)の好ポジションに位置付けられ、前振りの期待通り、ハイCPモデルということには間違いがないようです。
「1音1音がスッと出て消える」というオーディオにもっとも大切なことができ、素直さに少し優雅さ、上品さを加えたようなラインナップとなっておりますので、ぜひ一度お試しいただきたいと思っております。

SOULNOTE D-2

8月 6th, 2018

今回はSOULNOTE社の新DACをレポートさせていただきます。

【大和魂を籠めた旗艦の名にふさわしい本格派!】

珍しくスペック的なところから触れていきますが、このD-2はESS社の最高峰DACチップ『ES9038PRO』を左右で2基ずつ、合計4基を搭載するというモンスター級の仕様となっております。
これが一体どういうこと?かと言いますと「パソコンやスマホに(本来1基あればよいはずの)CPUが4基ついている」ことと同様であり、端的に言えば「高速(処理)・高精度・(4基同時に稼働することで)複数同時処理」が実現できるようになっているのです。
1つでも十分高音質を得られるという『ES9038PRO』を4基ということで、嫌でもそのすごさが伝わってくるようです。(黒江は高性能DAC=高音質とは思っていない派ですが。)

音の(データの)処理はDACチップによって演算処理されるのですが、これはCPU(の役割)と何ら変わりのないことであるため、DACの数が多ければより高度で高精度な処理を高速かつ同時に複数処理することができるということになります。

しかしながら、(パソコンやスマホが熱くなることがあるように)CPUやDACは処理が多くなる“高負荷状態”になると発熱し、排熱・放熱が間に合わないと処理能力が落ちたり、最悪は熱暴走することになってしまいます。
そのため、DACを4基搭載して安定した動作を得るのはそう簡単なことではないのです。
このD-2ではその難業を見事にクリアしての製品化ということになるのですが、十分な排熱・放熱を可能とさせるために「まるでアンプ」のような作りになったということは先に述べておきたいと思います。

■SOULNOTE [D-2]
●一聴して感じられるのが「高い情報量」であり、1音1音が非常に高密度かつ高分解に感じられます。高密度と高分解は両立しづらい(相反しやすい)要素であると思いますが、簡単に言うと高解像度のスマホを1音(1パート・1楽器)とすると、そのスマホを一面にびっしりと敷き詰めたような印象であり、どの音に注力しても高密度かつ高分解に聴こえるようなサウンドです。
●高精細な情報量タイプは(高解像度のディスプレイに静止画を描くのは容易く、高解像度の動画を滑らかに動かすのは難しいように)スピード感に難があるものも少なくない印象ですが、このD-2はハイスピードの部類に入るくらいのスピード感を保持しています。(ハイスピードの部類に於いては中の中~中の下くらいでしょうか。)
●…と、一見デリケートなイメージに思われるかもしれませんが、(ロックやメタル系を聴く上では)アグレッシブ系に属するサウンドであり、ビシビシとした立ち上がりや(超ではないけれど)高いキレ味を持ち合わせており、熱く(ホットに)畳み掛けてくるようなドライブ力を感じさせてくれます。
●帯域バランスも良好で、各帯域のスピード感も揃い、高い定位感・音像感となっております。
●S/N感ももちろん良好で1音1音がアグレッシブに飛び込んでくるものの耳に残るようなことなく、スッと次の音が飛び込んでくる(濃厚なんだけど後味すっきり、さっぱりのような)印象です。
○音場は少し狭く、左右や天地に広大に拡がるような、いわゆる“音場型”ではありません。
○(狙いのサウンドであると思いますが)少しだけ低重心のサウンド傾向となり、高域~超高域の派手さ、華やかさを求める方には少し物足りないかと思われます。
黒江的好み度:S-

…ということで、最近では(めちゃめちゃ高評価だった)CHORDのDAVEと同様に高く評価させていただきたいサウンドでありました。(DAVEとは傾向・キャラクターが反対に近い面もあるので、正に“双璧をなす”状態です。)
個人的な感想としては一聴してすぐに「A級アンプみたい」と思うほどに、厚み(熱さ)と激しさを感じましたが、とにかく(音の)収束が早くてすっきりしているので、(胃で言うところの胸焼けをおこすような)くどさやしつこさが無く、A級の良い点だけを上手く取り入れられたアグレッシブ系の好例であると考察しています。

同じ非常に高い情報量でもファーっと広がるようなDAVEに対して、バーンと音を浴びさせられるようなD-2となっていて、やはり音作り・音決めは面白くて奥深いものなのだな…と関心させられました。

文字通りSOULNOTE社のフラグシップ機と言えるサウンド、ぜひチェックしていただければと思います。