McIntosh MA5200 vs MA6700

9月 10th, 2013

少し間が空きましたが、この度久しぶりに元祖の輸入元エレクトリに復帰し、新作を発表した名門中の名門オーディオ(主にアンプ)ブランド『McIntosh (マッキントッシュ)』からインテグレーテッドアンプの兄弟機をレポートいたします。
(名門ブランドだけに当ブログにしては高級なものになってしまって恐縮ですが、憧れのブランドの一つになれば幸いです。)

【NewGeneration McIn Sound !?】

まず先に(お得意の)脱線したお話からになりますが、“マッキントッシュ”と言われるともう一つのビッグネームを思い浮かべる方も多くいらっしゃるのではないかと思いますが、(そうです!)正に今現在、このメーカーをご存じない方はいないであろうApple社のコンピューター名と同じ“マッキントッシュ”というメーカー・ブランド名なのです。

ただし、同じ名前でもちょっとした相違点がありますのでザザッと箇条してみます。
★オーディオの“マッキントッシュ”はメーカー・ブランド名、コンピューター(類)の“マッキントッシュ”は商品名(TOYOTAのCROWNとか、Fenderのストラト[キャスター]とか、Gibsonのレスポールとか、HERMESのバーキンとかと同じ)です。
★スペル・綴りが違っていて、オーディオは“McIntosh”、コンピューターは“Macintosh”です。※オーディオは「a」が無く、「I」は大文字なのが正式なので覚えてもらえると嬉しいです。
ちなみに、Appleの“Macintosh”は最近のモデルでは一切使われておらず、略称の“Mac(iMac/MacBook等)”になっています。

おまけで、(僕は最近はじめて知った)アパレルの“MACKINTOSH PHILOSOPHY”は全部大文字で「K」入りです。(たぶん。)
すべて正しく書き分けられるとちょっと素敵(…な気がします)。
(歴史と言いますか、いち早くマッキントッシュを名乗ったのはこのオーディオブランドなので、Appleファンのみなさんにはちょっとリスペクトしてもらいたいような気もします…ね。)

…と、早々に脱線いたしましたが、新モデルのレポートの前に歴史ある“マッキンサウンド”の特徴をご案内したいと思います。

●とにかく、『パワー・エネルギー・情報量・密度感・濃厚感』という表現の似合う雄々しいサウンドが特徴です。
(繊細さ、クリアさなどが感じられないわけではないのですが、まずはパワフルさを感じる傾向です。)
●スタイルでは漆黒のガラスパネルに“ブルーアイズ”と呼ばれる青く灯るメーターが最大の特徴であり、遠くから見ても、誰が見ても一目瞭然のマッキンスタイルは(僕自身をはじめ)多くのファンを長年に渡って虜にしています。(これが“キュンキュンする”って言うんでしょうか。^-^;)
●多くのモデルに“マッキントランス”と呼称されるオートフォーマーという出力トランスを搭載しており、これが“マッキンサウンド”の源流とも言われています。
(まだまだ書きたいことはありますが、長くなるので簡潔に。)

…これらを踏まえて、この度の新製品MA5200とMA6700を「vs レポート」してみたいと思います。

■McIntosh [MA5200]
●同メーカーの中では、いわゆるエントリーモデルであり前述の“マッキントランス”を省略したモデルです。
(かなり前に同様の省略モデル「MA6500」が生産されており、黒江的にはもっともサウンドが気に入っていたモデルの一つだったので期待大でした!…が。)
●低域が強めで、パワーで押しこんでくる、いわゆる“マッキンサウンド”を強く感じられるサウンドです。
●暖色・低域寄り(極端に言えば低域[3]:中域[2]:高域[1]くらい)・高い押し出し感・パワフルなドライブ力を持っていますので、大型のフロア型スピーカーなどもガンガン鳴らしてくれそうです。
(当店では小型スピーカーしか鳴らせなかったので十分な魅力を引き出せなかったのかもしれませんが…)
○全体的に暗めであり、少し見通しが良くない印象もあります。
(情報量が多すぎて当店の小さな試聴室では部屋が音で充満してしまった感があるので広めのお部屋の方が向くようにも感じられました。)
○(マッキンは総じてですが)スピード感はやや遅め、音場感もやや狭いように感じられました。
(しつこいようですが、部屋との相性も考えられます。)
○少しサウンドは先丸、音の線は太め、エッジ感もビシッとした明瞭なタイプではありません。

■McIntosh [MA6700]
●こちらは“マッキントランス”搭載のプリメインアンプですが、MA5200に“マッキントランス”を載せた(またはMA5200がMA6700から“マッキントランス”を抜いた)設計ということではないようです。
(前述の通り、以前は“マッキントランス”レスが好きだったので、こちらはあまり期待しないでの試聴となります…。が!)
●基本的にはやはり“マッキンサウンド”です。…が、かなり洗練されたような、モヤモヤ・モワモワとしていたものが晴れたような、1レベルも2レベルも高い“マッキンサウンド”が感じられるサウンドだと思います。
●基本的にはやはり低域寄りだとは思いますが、こちらは中低域寄り([2]:中域[2]:高域[1.5]くらい)という表現の方が的確で、明らかな低域過多に感じられることはありませんでした。
●暖色傾向もさほど強くは無く、寒色・暖色のちょうど中間~ほんのり暖色といった音色傾向で、音像やエッジ感もしっかりしています。(少し先丸ではあります。)
●何より評価したい点が、スピーカーが「こんなに楽に鳴らしてもらっていいのかな」(←もちろん幻聴です。)と言っているように聞こえるくらい軽々と鳴っている点です。このアンプならどんなスピーカーでも駆動力不足に悩むことはなさそうです。
(“This is ドライブ力・トルク・駆動力”と言えるような、アンプの王道・王様とも言えるような何とも表現に苦しむセールスポイントです。)
●スピード感はやはりありませんが、抜けや見通しは上々であり、音場感も(とても広大とは言えませんが)十分な広がりを持っています。
●不得手なサウンドはあるものの、ベースのうねりやバスドラの(深い)沈み込み、オーバードライブの油っこい歪み感、男性ボーカルのうっとおしさ、肉厚の金属音、ビーターのインパクト音などなど“マッキンサウンド”でしか感じられないサウンドもまた魅力的だと思いました。
○PioneerのA-70と同様にイコライザーでハイ(高域)を少し上げて聴いていただきたいです。

…と、(個人的な主観&当店のセッティングでは)結果的にはMA6700の圧勝となりました。
とは言え、MA5200が劣っていたというよりは、MA6700の完成度が非常に高かったのだと感じています。

結論として…MA5200でさえとても高額でありMA6700は更に高額ではあるのですが、MA5200をご検討されているかたはもう一声がんばっていただいてMA6700まで何とか手を届かせていただけたら…と思いました。

P.S.
“ブルーアイズ”かっこいいな…。
部屋を暗くしてマッキン眺めてるだけでもすごい満足しちゃうんですよね…。
配色なのか、無機質と有機質が同居したようなデザインなのか、“McIntosh”のロゴが緑なのもポイントなんでしょうか…。

NuForce STA-100 with Essensio Plus

7月 9th, 2013

今回は久しぶりに上々の(黒江的)ヒットになった期待の新製品レポートです。

【小柄でヤンチャな爆走ボーイ。】

輸入元(本国原文の和訳?)によると『エレガントで控えめなサイズの筐体』ということなので、“体は音を表す”のではないかと(黒江にしては珍しく)妙な先入観を持っての試聴となりましたが、いい意味で期待を裏切ってくれました。

いつものようにまずはザッと書き出してみたいと思います。

■NuForce [STA-100]
●(価格の割には)情報量が高く、1音1音が(薄っぺらくなくて)しっかりしていて、且つハイスピード。力強いサウンドなのに高いスピード感を誇るのは大変魅力的です。(まず、もっとも注目した点でした。)
●帯域バランスはやや低音寄り、…というよりは少し高音が控えめといった感じです。
●輪郭・エッジは鋭すぎず、硬すぎず、強調の無い範囲での明瞭系です。低域もビシッとタイトで緩さは感じられません。
●(前述のエッジ感も含め)シャープ・抜け・キレ・クリアといった“ハイスピード・クリア系”ではなく、(小粒ではあるものの)音のつぶてを投げつけられるような“アグレッシブ・ドライブ系”の傾向です。
●音のトーン(質感・温度感)はキンキンの硬質・寒色・クールといった傾向ではなく、比較的中庸なポジションに感じられ、(軟らかく・暖色な)ウォームには程遠いですが、少し熱さを感じるホット(パッション)なエッセンスを少しだけ感じるサウンドの印象です。
●1音1音の分解能(シンバルやディストーション、シャウトの成分・粒子感が細かく分解されているか)も上々です。
○強いてウィークポイントを挙げるならば「S/N感」で、前述に挙げた分解は上々であるものの、各パート間、楽器の位置関係に於ける距離感である“分離感”には少し物足りなさを感じ、ややガシャガシャとした落ち着きのない感じが見受けられました。(これがちょっとヤンチャに感じるポイントです。)
○音場の見通し、奥行きも(これらを評価している機種に比べると)少し見劣りする点があります。

黒江的好み度:A+

…と、いうことで黒江的には「お値段以上○○○」な1台ではないかといった結論に至りました。
(特にこの数年、アンプ・パワーアンプには個人的アタリが全然出ていなかったので…。)

なお、ザ・ステレオ屋では、north star design [Essensio Plus]というプリアンプとコンビを組ませていますが、このコンビとPioneer [A-70]は非常にいい勝負をしていると思います。
加えるならばCP(コストパフォーマンス「コスパ」)では圧倒的にA-70ですが、north star design [Essensio Plus]はUSB DACとしても秀逸なのでPC/Macなどとの絡みの優先順位でもチョイスは変わってきそうです。
(以前のレポートでA-70のUSB DACサウンドはあまり好みでないと書いていますが、調べてみると奇しくも前回に出てきたESS社製のDACチップだったようです。)

いずれも“高発熱”“高消費電力”ではありませんので、“節電の暑い夏”でも差支えないと思います。
気になった方はぜひ一度聴いてみてください!

north star design Impulso

6月 17th, 2013

久しぶりの更新です。
(なかなか書きたいネタがなかったので…。)

このところ個人的なストライクを連発してくれている『north star design』より新しいDACが登場しました。
なんでも特に大当たりだった“Essensio”の後継機ということなので、かなりの期待作です。
(伴ってEssensioは生産終了ということで…とても残念です。)

早速、2機種を聴き比べてみましたので感想をご覧いただけると幸いです。

【青のEssensio、赤のImpulso。】

ちょっと大袈裟ですが、このくらいに伝えておいた方が良さそうなくらい「まったくもって異なるサウンド傾向」と言えます。
ですので、(近々ではPioneer A-50/A-70と同じように)後継モデル・兄弟モデルなどと思い込み、同様のサウンドが得られると思って購入されることのないようにご注意ください。
(メーカーや紙面等では「Essensioの後継」と表現しますが、いわゆる製品ポジション・価格ゾーン的な後継という意だと思われます。)

いつものように主にEssensioとの「vs 形式」でピックアップしてみます。

■north star design [Impulso]
(特にEssensioと共通している点としては…)
●S/N感・レンジ感・分解能が高く、音作り・化粧・味付け感の少ない、素直で癖のないタイプのサウンド傾向です。
(そういう意味でも、“青と赤”なんて例え方はちょっと極端な例えです。)
●広々と大きなサウンドステージを展開する傾向ではなく、ピシッと音像を描きだす、(高)音像定位タイプだと思います。
●Essensioよりは少し劣りますが、いわゆる“ハイスピードサウンド”であり、音のキレなども上々です。
(ここからはEssensioと異なる点、固有の点として…)
●Essensioは1音1音がスッキリとクリアでシャープであったのに対し、Impulsoは1音1音がもう少し太く、肉付きを感じられるサウンドです。
(太いと言っても過不足のない肉付きであり、芯・骨・肉・輪郭(肌)の全てが少しずつEssensioよりもたくましい感じです。悪く言えばEssensioはガリガリのシャープサウンドであり、芯と骨は線が細く、肉はほぼ無し、輪郭(線)はしっかりと描かれているが、細い(薄い)といった印象です。)
●非常に細かく分解され、キレとスピードで(音の粒子が)体を通り抜けていくようなEssensioに対して、Impulsoは音のつぶてを投げつけられるタイプ、いわゆる“アグレッシブ系”であり、(1,2世代前の)PRIMARE・TEAC・ATCなどの殴打感のある方向にサウンドが変わっています。
●シンバル1つとっても「よく分解され、金属感が感じられるEssensio」「アタック感が高く、躍動感を感じられるImpulso」といった印象で、ギターは「ザラつきが鮮明なEssensio」「ドライブ感とバッキバキ感(伝わってください…笑)が秀逸なImpulso」といったような違いが感じられます。

…ということで、結論として「この2機種は先行も後継も無く、兄弟でも無い」と結論づけたいと思います。
(なので、黒江的には『無機質で解析的なEssensio(クールなので“青”)』と『暴力的で情熱的なImpulso(パッションの“赤”)』とイメージを付けさせていただきました。)
みなさんにもご購入の際はぜひ試聴をお勧めします。

P.S.
…と、(まだ一切の資料が無かったので)返却時に分かる範囲でのスペックをお訊ねしたところ、やはりと言いますか肝心要のDAC(チップ)がまったく別のメーカーに変わっていました。
(EssensioはCIRRUS LOGIC(シーラスロジック)社、ImpulsoはESS社ということのようです。それは音の傾向が全然違うわけですね…。)
個人的にはEssensioが頭1つリードしています。(ホント好みの問題ですが。)
ちなみに、ESS社のDACチップは最近とても評判のようなのですが今まで一度も黒江的にはハマりませんでした。…が、今回はじめてESS搭載のDACで当たりが出たのでちょっと嬉しかったです。
(決してDACチップだけで音が決まるわけじゃないのですが、ある程度は左右されますからね…。)

marantz NA-11S1

4月 19th, 2013

前回のLUXMAN [DA-06]に続いて、今回はもう1機種の注目DACを個別レポートします。

DA-06と同様に「DSD対応DAC」としてのレポートではなく、あくまでも単体DACとして音の傾向を中心に書かせていただいておりますので予めご容赦ください。

【豊富な情報量がデジタルフォーマットからアナログに近いサウンドを取り出す日。】

■marantz [NA-11S1]
●情報量が高く、メリハリがあります。
●クリアネスに透き通るような傾向ではありませんが、鈍足傾向ではなく、中速より少しハイスピードに寄せたポジションの“高ドライブ(感)サウンド”といった印象です。
●1音1音が分離し、分解されるタイプではなく、密度感・質感が高めのサウンドであり、(黒江が比較的好みやすい)スカスカした感じは一切ありません。
●濃いめで厚めな音の傾向ですが音に丸みや贅肉感はなく、「細めの芯・やや太めの骨・適度な肉・少し厚めの皮」という構成の傾向ではないかと思います。
●出音やアタック音、音の立ち上がりが明瞭で「ビシッ・バシッ・カチッ・バチッ」といった瞬発力の高さを印象付けます。
●どちらかと言えば「暖色(少なくとも寒色ではない)傾向」であり、粘り気のある音やボーカル、低音の重み、皮の厚みなど、力強さが欲しいサウンドにハマりやすい印象でした。
●(そういったジャンルを聴けば…かもしれませんが)眼前に向かって畳み掛けてくるアグレッシブさがあり、定位も良好です。
●解像度が高く、しっかりとしたダイナミックレンジを感じさせるサウンドであり、音場はやや広めです。
●高域~低域まで、『1音1音をクローズアップすると』全体的に(1音1音は)落ち着いた印象で、「高域がギラギラすることもなく、中域がパサつくこともなく、低域がゴワゴワすることもなく」安定しています。
(派手か地味かで言えば地味、水か油かで言えば油[パステル画か油絵かで言えば油絵]とも言えそうです。)
○良く言えば「まとまりのある重厚なサウンド」ですが、悪く言えば「やや分離の悪い、ほぐれないサウンド」と捉える方もいることと思います。
○余韻が少し強めであり、音場特性に少しだけ癖を感じるのでこの辺の聴こえ方で好みが分かれそうな気がいたします。
○スカッとしたサウンドを求められている方には少々濃いめのサウンドに感じられるかもしれません。
※いずれにしてもDSDやFLACなどのハイレゾ音源、更に言えばオーケストラなどを聴いての分析ではありませんので、あくまで参考までに捉えていただけると幸いです。

…と、やはり「vs レポート」と被っている表現・内容もありますが、一口に言えば「情報量の豊富なタイプで少し重め」という傾向ではないかと思います。

黒江的には“クラシック向き”と位置付けており、当然のこと黒江的好み度は自然と低めになりますが、(ヘヴィサウンド系・デス系は意外にマッチしていますし、)基本的なDACとしての音質はバッチリなので傾向を把握された上で選択していただければと思います。

なお、専用のコントロールアプリ「Remote App 3.0.7」を用いた操作も検証したところ、こちらはやや残念な結果に…
全体的にやや動作が不安定であり、「選曲後にタイムラグが発生する・選曲→再生→選曲など素早い操作に弱く、フリーズする・NASとの接続が切れてしまう」などの不具合が発生しました。
(iPhone 4[iOS 6]やiPod touch 4th[iOS 4]などで検証し、古い端末ほど顕著でした。)

NA7004の時分に使用していた「Wizz App 2.23」は非常に軽快な動作・操作でしたので高く評価していたのですが、あいにく「Wizz App 2.23」ではNA-11S1がデバイスとして認識できず、「せめて、このWizz App 2.23でデバイス認識を可能にしてユーザー側に選択肢を残してくれれば…」と思う結果となりました。
(…って、両アプリ共に最新Ver.などで既に解決されていたら申し訳ございません。)

…と、いうことで「vs レポート」にはじまり、marantz [NA-11S1]とLUXMAN [DA-06]を個別にレポートいたしましたが、やはりDSDやネットワーク以前に「DACとして音が気に入るか」をベースに選んでいただいた方が良さそうな2機種ではないかと思いました。
まだ迷われている方のほんの少しでも足しになれば幸いです。

P.S.(オマケ)
LUXMAN [DA-06]と同様に最後にフィルター等の特徴をサラッと書いておきます。
Filter 1:(Filter 2と聴き比べると)いわゆるストレートという表現がピッタリな本機のスタンダードサウンドです。
Filter 2:(Filter 1と聴き比べると)こちらはスムーズ・スムースといった印象で、少し穏やかに滑らかになる印象です。
Noise Shaper:S/N感が向上するというよりは少しザラツキが取れたような印象ですが、ちょっと音がデッドになる傾向です。
DC Filter:(こいつがイマイチなにをしているのか分かりませんが…、笑)少し1音1音がシャキッとするような印象なので黒江的にはオン推奨でした。
※「Filter 1・DC Filter ON」が個人的には好みでした。

LUXMAN DA-06

3月 26th, 2013

少し間があいてしまいましたが、前回の「vs レポート」より、今回はLuxman DA-06をピックアップしてレポートしたいと思います。

【新世代LUXトーンはじまりの音。(?)】

まず、はじめに結論として述べておきたいのは(DSDがどうのこうのという点を抜かしても)この『Luxman DA-06はD/A Converterとして十分な音質を備えている1台』という点です。
巷ではどうしても「DSD対応DAC」としての評価が色濃くなってしまいますが、前回にも“(もしこれが揃えば黒江的にはパーフェクト?!と言えるかもくらい)全体的な基本音質は高いと思います。”こう述べているくらいですので、その真価は「DSD対応」という小さなものだけで決めていただきたくないというのが本音でもあります。

(…って、読んでいただければ分かりますが、僕のレポートはDSD再生を聴いてのものではありませんしね…。笑)
そのくらい完成度の高いDACであると思いますが、(感情的にならず)まずは淡々と印象を述べていきたいと思います。

■LUXMAN [DA-06]
●S/N感が高く、見通しが良いです。
●“超”ではありませんが、かなりのハイスピードサウンドで、抜けも上々です。
●…が、エッジ感・インパクト感・アタック音・鋭利で俊敏な立ち上がり、といった音の切れに繋がる項目は強くないので『切れ味のあるサウンドとは言えません』。
●…ですが、逆に「音(の先端)に丸みがある」「骨太・肉付き」「膨よか(ふくよか)」といった印象でもなく、「1音1音がスッとソフトに立ち上がってくる印象」を持ちます。
●「高音が硬質で低音がブーミー」「高域が寒色で低域が暖色」といった、各帯域の音にバラつきが少なく、一貫して繋がりの良いサウンドです。
●前方に押し出すサウンドでもなく、後方に広がるサウンドでもなく、その中間といったところですが、定位感も良好で(ボーカルものなら)センターにピシッと口元が浮かび上がります。
●ステレオ感を強調することもなく、(そのせいか)音場感はやや狭い印象です。
●高音はサラサラと粒子の細かいクリア系、中音は癖の少ないストレート系、低音はルーズさのないタイト系と比較的モニター調よりではないかと思います。

○悪く言えば「これといって面白みのない、特色や個性に欠けるサウンド」「どんなジャンルでもこなせるけど、図抜けて合うジャンルが無い」とも言えます。
○ハイスピードで抜けも良い割りには、音が走ってこないので「その辺(スピーカー辺りで)で鳴ってる感じ」のサウンドになりやすい傾向です。
○伴って、高い(前後に長い)奥行き感を感じさせてくれるサウンドではありません。(定位がいいと感じるので決して平面的ではないのですが…。)
※「特色や個性に欠けるサウンド~」に関してはCLASSIC / JAZZからJ-POP / ROCKなど多岐に渡るジャンルを一手に担うことの多いPCオーディオという用途には向いている(長所である)とも考えます。

…と、前回と被っている表現・内容もありますが、やはり何度(EssensioやNA-11S1などと)聴き比べてもこのような見解となりました。
当ブログでもLUXトーン・LUXサウンドという言葉を時折使わせていただいておりますが、サウンドを表現すればするほどに、往年のLUXトーン・LUXサウンドとはイコールにならないサウンドであることは確かなようです。

(…ですが、音が細かく綺麗であることや、きついエッジ感が無いことなどから『長く聴き続けていられるサウンド』『耳にやさしく、聴き疲れしないサウンド』であることには間違いがなく、トータル的なサウンドのまとめ方には往年のLUXトーン・LUXサウンドと相通ずるところがあるのではないかと勝手に結論付けています。
濃厚・濃密だった『往年のLUXトーン・LUXサウンド』から、(薄味だけれど美味で素材を活かした?)さっぱり系の『新世代LUXトーン・LUXサウンド』への一つのシンボルとなるサウンドなのではないかと決めつけてみましたが、みなさんはいかがに感じられますでしょうか。)

いずれにしろ、音質については『黒江的評価:◎』ということで、滅多にない高評価となっております。(黒江的オススメの1台)ぜひご検討に加えていただけると幸いです。

P.S.(オマケ)
デジタルフィルター(DF1~DF3)の傾向ですが…
DF1:(結果論として)DF2とDF3の中間に感じられました。
DF2:高域が華やいで(目立って)更にサウンド全体の見通しが良くなるも、(ただでさえ前に来ない音像・音場が)全体的に少し引っ込んでしまいます。
DF3:DF2とは逆にサウンド全体がややせり出し、(黒江的には)課題であったアグレッシブさが(結構)補完されます。その分やや荒くなる傾向はありますが、著しく基本音質を落とすことはありません。(オススメのセッティングです。)

このフィルターに関しては「一切の前知識のないままで3種を聴き、それぞれの印象を前述のように整えました」。
その後、DF1~DF3の波形や傾向を答え合わせいたしましたが、概ね一致したようです!
(証人は弟分とLUXMANの方くらいしかいませんが…。^-^;)
超極端に言えば、DF1はプレーンとして、『DF2は余韻型・DF3は立ち上がり型』に波形を少しシフトする感じ…のようですが、結局はDF2とDF3の中間がDF1なのだと思うので当を得ているとは思います。(よね?)

LUXMAN DA-06 vs marantz NA-11S1

3月 2nd, 2013

すでにPCオーディオ/ネットワークオーディオを実践されているユーザーさんの中では期待の新製品ではないかと思われる2機種ですが、別々のレポートを書くにあたって「どっちを先に書けばいいんだ!(笑)」といった葛藤に悩まされてしまったので、とりあえず「vs レポート」形式にて2機種をダイジェストにレポートしたいと思います。

(※ご周知のことと思われますが、「vs」とは「2つを比較する・対して述べる」という意であり、「優劣を決める」という意味ではありませんので予めご了承ください。)

まずは『2機種の見出し合戦(?)』でいきます。(※試聴はUSB接続でのWAVファイル再生とCDプレーヤーをCOAX接続での再生です。)

DA-06
【スピーディーで切れのある(テキパキ動ける)才色兼備(なでしこ)ガール】

NA-11S1
【スーツもユニフォームも着こなす体育会系メンズ】

…正直ちょっと適当ですが、大きく述べたいことは伝わるかな…と思っております。
そんな前置きをご覧いただきつつ、それぞれのサウンド傾向を大まかにレポートしてみますと…

■LUXMAN [DA-06]
●一聴して「キレイな音」。雑味がない・透明感があるといったスッキリ系の傾向です。
●S/N感が高く、分解能・定位・レンジ感も良好です。
●高域~低域のバランスもきれいで、「高音が走る、低音がもたつく、ボーカルが引っ込む」などの帯域間でのスピードの差異がありません。
●“かなりのハイスピード”とまでは言えませんが、ハイスピードの部類であり、抜けや切れも上々です。
●(これが叶ったらLUXサウンドではないと思いますが…)強いて言えばアタック感がソフトめで、歪み感を筆頭に、ザグり・エグみなどの“アグレッシブさに欠ける”といったところですが、(もしこれが揃えば黒江的にはパーフェクト?!と言えるかもくらい)全体的な基本音質は高いと思います。
●逆に“マイルドで、しなやかで、柔らかくて…”のような(往年の)LUXトーンを期待されている方にはやや不向きなサウンドの傾向ではないかと思います。

■marantz [NA-11S1]
●一聴して「パワフル・マッシブ・エネルギッシュなサウンド」。高い情報量で密度感のある傾向です。
●解像度と音場感(サウンドステージ)が高く、深さのある低域です。
●高音域がやや抑え目になっており、少し低重心の傾向に聴こえます。
●こちらも“かなりのハイスピード”とまでは言えませんが、十分にハイスピードの部類であり、もたつきのない立ち上がりの良いサウンドです。
●少し難しい表現になってしまうのですが、1音1音が「シャープなアタック音から、一瞬でグッと膨らみ(掛け)、ギュッとタイトに絞られつつ余韻を帯びて消えてゆく」といったような“デジタル的”と“アナログ的”を掛け合わせたような印象もあり、このあたりの聴こえ方で好みが分かれそうな傾向と思われます。
●こちらも、“艶やかで、高音が伸びて、すっきりめの…”といった(黒江が抱いていた)marantz的な印象は薄く、“アグレッシブに畳み掛けてくる”サウンドに感じられたので試聴等でご確認いただけると幸いです。(ゴワゴワしたヘヴィロックやグラインド・デスあたりはかなりハマってました。重厚なサウンドのソースと密度感の高いボーカルは非常に高評価です。)

…と、こんな風に並べ書くと「DA-06は音場が狭い?」「NA-11S1はS/N感に難あり?」と勘繰られるかもしれませんが、双方共に「S/N感・解像度・レンジ感」などの基本的音質は十分、十二分ですのでご安心ください。

見出しで表現したかったことがなんとなく伝わったのではないかと思いますが、
(すべて“どちらかと言えば”ですが)
DA-06は女性的・NA-11S1は男性的
DA-06は文系/理系(非体育会系)・NA-11S1は体育会系
DA-06はスピード感・NA-11S1はパワー感
DA-06は和風顔(さっぱり顔・薄化粧)・NA-11S1は洋風顔(ソース顔・彫りが深い)
など、双方には真逆の印象・感想を持つことも多くありました。

(こんなレポートで参考になるか分かりませんが)ご検討の際に少しでも役立てれば幸いです。

『WAVファイル』ってなんて読む?

2月 16th, 2013

たまには緩めのエントリーでも書いてみます。

表題の『WAVファイル』、みなさんはなんて読んで(呼んで)ますでしょうか?
ワブファイル?ウェブファイル?それとも、ダブリューエーブイ…ってこれはなさそうですね。

黒江的には断然、当然、「ウェブファイル」です。
正直言って機器のレポートとかには(好みの問題や聴いているジャンルなどでも大きく変わってくるので)異論・反論いただいても構いませんが、本件については異論・反論を一切受け付けません!…と言いたいくらい「ウェブファイル」です。

…と、こんなことで熱くなっても何ですし、もうちょっと理論?的に「なぜウェブファイルなのか」を少し解説させてください。

そもそも“WAV”というのは“拡張子”と呼ばれるファイルの種類を表す、「ファイル名の後に続く苗字(ファミリーネーム)」みたいなものです。
代表的な拡張子には“txt”(メモ帳)とか“htm”(WEBページ)とか“mp3”(圧縮音源)とか“xls”(エクセル)とか“doc”(ワード)とか“pdf”(書類)など色々とあります。
(“abcdefg.txt”というファイルなら、(フォントとかサイズの指定が出来ない簡易な)テキストファイルのファミリーのabcdefgという名前の子といった解釈になります。)
ファイル名と拡張子の間には必ず“.”(ピリオド)を入れるのがルールで、ピリオドの前がファイル名(「黒江 昌之」なら下の名前「masayuki」)、ピリオドの後が拡張子(苗字)です。
(日本人が海外で名乗るときに「ファーストネーム・ファミリーネーム」[masayuki kuroe]で名乗ったりするのと同じですね。)

つまり、拡張子はそのファイルがどんな種類のファイルであるか、(そして、その種類のファイルをどのソフトで開く、実行するか)を分類するために定められた動作管理用のファイル名(の一部)というところです。
(なので、この拡張子を例えば“mp3”→“txt”に変更すると正常に開けないことがあります。→特に古いWindowsでは基本的に開けません。)

ちなみに、AppleのMac OS系にはこの拡張子の概念が(あまり)無く、(Windows系よりは簡単に)変更もできないのでファイルが開けなくなることが少ないですが、実際はファイルデータの中に拡張子と同等のデータを保持しており、(変更しやすい)ファイル名という外側に露出しているか、ファイルの中に埋め込まれているかといった程度の違いであるのでMac OS系にも拡張子に似た概念は存在しています。
(最近はMacとWindows相互でファイルを共通・共有・共用できますしね。)

…で、でで、ここからが本題です。
“txt”が“TEXT”を短縮したものであることは多くの方がご存知ではないかと思いますが、“wav”も本来は4文字の短縮形なのです。(短縮って言っても1文字だけですが…。笑)

……そうです。もうお分かりいただけたのではないかと思いますが、“wav”は“WAVE”を短縮したものなのです。
なので、『WAVファイル』を正式に呼ぶとなれば「ウェーブファイル」または「ウェイブファイル」、それを短縮したものなので『WAVファイル』の呼称は「ウェブファイル」の方が自然なのだと思うのです。
(実際、今でいう“DTM”[DeskTopMusic]などが浸透し始めた頃は宅録ユーザーをはじめ、エンジニアやプレーヤー、レコーディング系の雑誌などでも「ウェブファイル」ってみんな言ってましたし、むしろ「ワブファイル」なんて言ってるヤツ見かけたことないです!笑)

(ここまで書いてる時点で一切Wikipediaとかを見てないのであくまで予想ですが、)
『WAVファイル』はおそらくWindows系に搭載されたライン入力やマイクからの音声入力を録音できる「レコーダー」(?だったと思う)というアクセサリソフトが録音した音声をファイル出力するときに付けられ始めた拡張子なのではないかと思います。(もしくは広く使われるようになった。)
そして、この「レコーダー」を使用すると入出力された音声が常に“波形”としてモニタリングされるので(サウンド:SOUND)ではなく、WAVEになったのかな?…と。(WAVEの方が当時主流だった3文字拡張子にしやすかったのも一因かもしれません。“sou”とか“snd”だと分かりにくいですもんね。)

なので、なので、黒江的には断然、当然、「ウェブファイル」です。
…ので、(ワブ派のみなさんには)「ワブファイル」と今後も言ってもらってもいいんですが、「ウェブファイル」と言っても怒らないでくださいね。

P.S.
…というか、誰なんでしょう「ワブファイル」とか言い始めた(書き始めた)人は。
(ご存知の方いましたら教えてください。○○に行きます!笑)

ちくわぶ

Nmode : X-DP1-HF

1月 22nd, 2013

ご挨拶が遅くなりましたが、2013年も元気に始動しております。
本年もよろしくお願い申し上げます。

【醤油顔でちょっとおっとりタイプの肉食系細身イケメン?】

…年明け早々、なにやらワケの分からない見出しになってしまいましたが、遅ればせながら『Nmode : X-DP1-HF』をプチレポートしたいと思います。

まず、見出しから察していただける通り『か弱い乙女サウンド(…ってどんなサウンドでしょう…。)』ではありません。
滑らかにフワーッと流れてくるようなサウンドではなく、ビシッと鳴ってくるサウンドの傾向であり、このことから(どちらかと言えば)男性的な印象を持つ音が基調になっています。(本体の見た目も男性的ですしね。)

ザ・ステレオ屋らしく表現すると、いわゆる『シャープ&アグレッシブ系』に分類することができ、全体的に音の分解能が高く、低音もタイトで輪郭の甘さがありません。(このことから肉食系と付けました。)

ただし、“アグレッシブ”と言っても「鈍器で殴打するような」「音(のつぶて)をものすごい勢いでぶつけられるような」…といった暴力的でパンチ力の高い傾向ではなく、「平手で何往復もビンタされているような」“ピシピシ・ビシビシ”といった鋭い(痛みの)傾向に分類されると思います。
(このことから無骨で隆々という感じではなく、細身と付けました。)

サウンド自体は非常にS/N感が高く、きわめてクリア・明瞭です。音に雑味が無く、細かさが高いので音のディテールがよく見え、音像定位も良好です。
加えて、“シャープ・タイト”と挙げていますが、ガチガチの硬質サウンドには聴こえず、“ほぐれている”という形容も当てはまりそうですが、これは1音1音の分解能が高いので「音の線が見え、(絡まっていないので)ほぐれている」ように感じられるといった印象を持ちます。(端整だけどさっぱりしているので醤油顔と付けました。)

悪く言えば、淡々としていて無表情・無機質に感じられる面もありますが、実は最後に1スパイスあります。
(特にミッドレンジに)ほのかに、うっすらとウェット感を帯びているサウンドであることです。
(この“わずかなウェット感”が絶妙であり、好みが分かれるところだと思います。)

そして、どうやらこのウェット感によって、ややスピード感には劣るサウンドになってしまっており(決して鈍足ではありませんが)お世辞にも“ハイスピード”とは形容しがたいサウンドになっています。
(※最初に「シンバルとバスドラがリードしていくようなイントロの曲」を聴いていたときにはこの減速感が感じられませんでしたが、ギターリフがメインのスピードナンバーなどを聴き比べると明らかな違いを感じることが出来ました。)
(この点にちょっとおっとりと付けました。)

…と、基本的な能力は上々、特にこれといった欠点も無し、…なんですが、どっちにも寄りきれていないとも言えるタイプであり、相反する特性を併せ持っているとも言え、なかなか評価や表現が難しいサウンド傾向の製品であると思います。(こういったニュートラル系は昨今多いですが。)
(個人的にはもっとウェットでも良いし、逆にウェット感を限りなく抑えてスピード感を上げてもらえたら“どストライク”だったかと。)
総評としては【黒江的評価:◎/黒江的好み度:B-】といったところですが、みなさんはいかがに感じられますでしょうか。

P.S.
見出しはこれでもだいぶ短縮いたしました。(笑)
「(醤油顔でちょっとおっとりタイプの肉食系細身イケメンが)いつもは無表情だけど、時々ウェットな癒し系の顔を見せてくれる」でも良かったんですが…。

今年の一発目にこんな縦ノリのレポートで恐縮です…。(でもせっかく書いたのでアップします。)

Pioneer A-70 [postscript]

11月 21st, 2012

(採用にあたり条件付きながらも)数年ぶりに『ザ・ステレオ屋リファレンスアンプ』の座を射止めた「Pioneer A-70」ですが、当店のユーザーさんからも一様に好評をいただいておりますが、ぽつぽつと購入された方、ほぼ購入決定の方も増えてまいりましたので前回に書ききれなかったことを幾つか追伸させていただきます。

●USB接続やデジタル入力でのサウンド
原則的には前回のレポートの通り、「ハイスピード・クリア系・硬質傾向・エッジ感・キレ」といった“アンプのベーシックなサウンド”を感じさせますが、DACを経由するためかややサウンドに変化(エッセンス・スパイス)が乗っているようです。
USBやデジタル接続時のサウンドは(ライン入力時に比べ)「ややおとなしく、平面的」といった印象で、きれいではあるのですが少し棘が取れて丸くなる傾向なのでUSB接続などをメインに検討されている方はご注意ください。(スピードやキレも少し落ちます。)

●BASSの絞り加減
前回は“9時半~10時”と書かせていただきましたが、少し大げさでした。(ごめんなさい。)
(黒江的)ベストは“10時~10時半”あたりで、繋げるスピーカーの元々の低音量によって9時半や11時あたりをお好みでお使いいただければと思います。
(BASSのデフォルトはセンターの12時ですが、11時あたりで一気に低音が減衰するので試聴の際は「大体○時で」などと適当にせず、ぜひ微調整をしていただければと思います。)

●A-50との違い
「A-70とA-50の主要な部分は共通」とのことですが、実際に同時比較試聴を行った結果、(少なくとも黒江には)「とても同じようなサウンドには聴こえなかった」ので、「A-70のレポートや評価を見聞きしてA-50を購入するのは(A-50が良い悪いではなく違ったものなので)回避していただくのが賢明と思います」ということを今一度、明言させていただきたいと思います。
(「A-50とA-70は似たような音だけどA-50の方が安い分、やっぱり少し粗いかな…とか、解像度やS/N感に劣るかも」程度の差であれば、そう書かせていただきますので…。)
…ですので、(予算的に)A-50を検討されている方は必ず試聴していただければ幸いです。(できたらA-70との比較試聴もしてみてください!)

●サウンドの捕捉
(前回は特筆し忘れてましたが)S/Nが非常に高いのもポイントの1つで、何も再生していない状態の“無音時”に於ける(スピーカーから「スッー」と小さくノイズが聴こえてくる)残留ノイズもほぼ皆無であり、(音が出ている間は)その無音の空間に(次から次へと)ポッと音が浮かび上がってくるのが目に見えるよう、手に取れるような高い音像感も持ち合わせています。
逆に「1音1音の芯や肉付きはやや華奢な傾向」であるため、TEAC AG-H600や(旧機種の)PRIMAREのような“エグってくる感”はあまり持ち合わせておらず、“鋭利感”はあるけど“暴力的”ではないといった「無骨なマッシブさ、マッチョさ」は求め辛いかもしれません。(低音を上げれば少しカバーできますが…。)
とは言え、女々しいサウンドのアンプではありませんので、アグレッシブなジャンルをお好きな方も安心してお求めいただけると思います。(これで聴くSliPKnoTがめちゃくちゃ気持ちいんです…。)

…と、とにもかくにも(いい加減しつこいのはわかっていますが!笑)、条件付きであれば“黒江的サウンド”の間違いない今年(ここ数年)のベストアンプです。
しばらくは『ザ・ステレオ屋リファレンスアンプ』として長めの付き合いになりそうなので、ぜひ皆さんにもご検討いただければ幸いです。

Pioneer A-70

11月 1st, 2012

新製品時期ということで立て続けになりますが、ようやく巡り会えた『ザ・ステレオ屋NEWリファレンスアンプ』を今回はレポートさせていただきます。
(2つ前のエントリーではモニターの黒江的ヒット「DB1 Gold」をレポートしています。)

訳あってちょっとしたストーリー仕立て&毒舌の応酬となっておりますが、最後まで暖かい目で読んでやっていただけると幸いです。(Pioneerさん、気を悪くさせてしまったら申し訳ございません…。)

【その豹変ぶりは、まるで“みにくいあひるのこ”?!】

「はじめまして」…と開封された新しいアンプを見て、無意識の内に「半端なくカッコ悪いな」…と、口をついてしまったくらい(個人的には)最低クラスのデザインであり、その第一印象は最悪のまま試聴に入ります。

いつものようにチャチャッと繋いで、パパッといつもの曲を聴いた直後、(外観と同様に)無意識の内に口をついていました。
『なんなの?この低音域の狂ったようなバランスは』…と、そのくらい低音が耳につくバランスの悪さです。(もっとひどいものもありますが、N-50の“とっても好きだった”テイストを期待していたあまりにそのガッカリ感が半端なかったのです…。)

ふと、(Pioneerさん社内でのテストか、雑誌社さんか、他店さんなどで聴かれていたのかもしれないと思い、)「ひょっとしてイコライザーいじった状態になってない?」…と、(アンプのそばに居た)弟分にたずねます。

「いえ、つまみ位置はセンターですし、(EQなどをバイパスする)ダイレクトがオンになっています…。」
「えー、マジかよ。これが(このアンプの音作りをした人が思う、周波数帯域が)フラットなのか。」…と、首をかしげながら様々な考えを巡らせます。
「待てよ?これがまだ試作機で、このトーンコントロール(イコライザー)が間に合わせの物とかかもしれないよ?」…と、今度はPioneerさんに念のための確認をお願いします。

数分の電話の後、「今ここにあるのは、ほぼ量産品とイコールで間違いないようです…」とのこと。
「うわー、デザインも野暮ったいけど、音も野暮ったいなぁ。デザインにも音にもセンスが感じられないよ…。」なんてボロカスに言いたい放題のわたくしです。(陳謝)

…と、ここまでわずか数分。まだパッとしか聴いていませんでしたので(特徴をしっかりと把握するために)今一度の試聴です。(もちろん、すでに半分“心ここに非ず”の状態で。)
やはり低音が気になります。…が、(低音にばかり気を取られるくらい)気になる低音を一旦(耳の中で)削除して聴き始めたとき、(推理物を解決するときのような)閃きを覚えたのです。
『これ、低域以外はかなりいいセン行ってるかも…。』
…となれば試すことは1つです。

『ちょっとイコライザー(EQ)でBASSを絞ってみて!』
…当然と言えば当然なのですが、EQ特性がおかしいと思ったのなら、EQで調整してあげればよいのではないかと。
(ただ、僕自身も然りですが、オーディオユーザーの多くはこの“EQをいじる前提でアンプを選ぶ”ことを好ましく思わない傾向にありますので、やや抵抗感のある方法ではあるのですが。)

…ということで、ここからはいつものレポートです。ただし、BASSを絞った状態でのレポートとなりますのでご注意ください。

■Pioneer [A-70]
●いわゆる“ハイスピード系”であり、S/N感・分解能が高く、音の立ち上がりがスピーディで明瞭、1音1音のエッジも明確でキレのあるサウンドです。
●(黒江の好む)ピークを丸めないストレートなサウンドであり、ディストーションのガリガリした刺々しさ、シンバルのジャリジャリとした硬質感などがしっかりと再現されています。
●サウンドは寒色系、硬質系ですので「聴き疲れる」「キンキンする」「耳鳴りがする」など、好ましく思われない方も多くいらっしゃる傾向ですのでご注意ください。
●ディストーションギターやベースの巻き弦をピッキングする際の(ピッキング)アタック音、スネア・バスの(特に皮をピンと張った)アタック音なども得意分野であり、ステレオ感も(押し付けがましいセパレーションではなく)高いので、ディストーション&フランジャーサウンドなども絶品です。
●上下左右の音場・サウンドステージに広がりのあるタイプではありません。前後の奥行感は良好で(先日のDB1 Gold同様に)眼前に迫りくるというタイプではありませんが、しっかりと明瞭に前方に定位するサウンドです。
●ボーカルはやや無機的ではありますが、音像(口もと)がやはり明瞭で、シャウト系ボイスの歪みは抜群です。(低音デスボイスやグロウルはやや軽い感じになる印象です。)
黒江的好み度:S (BASS DOWN)
黒江的好み度:C- (DIRECT)

…と、久しぶりに黒江的には『ほぼ完璧なサウンド』のアンプが登場してくれました。
(ここまで高く評価したのは1つ前が「ONKYO A-7VL (ただし同軸デジタル接続時のサウンドのみ)」だったので、奇しくも「条件付き」の推奨ではありますが。)
振り返ると条件無しに(ここまで強く)オススメしていたのがもう5年くらい前の「TEAC AG-H600 (すでに生産完了)」でしたので、本当に待望のアンプとなりました。
アンプで悩まれている方はぜひご検討いただければと思います。(ルックスとEQをいじるのが許せるなら!笑)

ちなみに、BASSは通常(DIRECT)が時計の短針の12時ですが、黒江の推奨値は時計の短針が9時半~10時くらいのポジションです。(10時半~11時とお好みのポジションを探してください。)
当店以外で試聴される方も、ぜひBASSを調整して(DIRECTをオフにして、BASSのみを下げて)聴かせてもらってください。(他店さん、ご協力お願いします。)
なお、DIRECTをオンにするとS/N感や解像度が一段向上するものが多いですが、(幸いにして?)A-70はそこまでの変化を感じられなかったので、BASSを下げての常用でのデメリットは皆無であるとお考えいただいて結構です。

P.S.
BASSを絞って聴き始めた瞬間、さっきまでの悪態が一変「スゲーよ、このアンプ。めちゃくちゃいいじゃん!」と歓喜の連続だったことはご想像の通りです。(Pioneerさん、許してください。)
あらためて見るとルックスも無骨でなかなかいいんじゃ?
(デザインそのものはそこまで嫌いじゃないので)黒江的にはブラックモデルだったら全然ありなんですけどね。
Pioneerさん、デフォルトでBASSを下げて、ブラックボディ(インシュレーターもブラック)の“ザ・ステレオ屋Ver.”を出しませんか?!

最後に…弟機のA-50は「A-70とは印象の異なるサウンド」でしたので、「クラス下だから大体似たような音が出るだろう」という推測ではご購入されないようにご注意いただきたいと思います。