Pioneer A-70 [postscript]

(採用にあたり条件付きながらも)数年ぶりに『ザ・ステレオ屋リファレンスアンプ』の座を射止めた「Pioneer A-70」ですが、当店のユーザーさんからも一様に好評をいただいておりますが、ぽつぽつと購入された方、ほぼ購入決定の方も増えてまいりましたので前回に書ききれなかったことを幾つか追伸させていただきます。

●USB接続やデジタル入力でのサウンド
原則的には前回のレポートの通り、「ハイスピード・クリア系・硬質傾向・エッジ感・キレ」といった“アンプのベーシックなサウンド”を感じさせますが、DACを経由するためかややサウンドに変化(エッセンス・スパイス)が乗っているようです。
USBやデジタル接続時のサウンドは(ライン入力時に比べ)「ややおとなしく、平面的」といった印象で、きれいではあるのですが少し棘が取れて丸くなる傾向なのでUSB接続などをメインに検討されている方はご注意ください。(スピードやキレも少し落ちます。)

●BASSの絞り加減
前回は“9時半~10時”と書かせていただきましたが、少し大げさでした。(ごめんなさい。)
(黒江的)ベストは“10時~10時半”あたりで、繋げるスピーカーの元々の低音量によって9時半や11時あたりをお好みでお使いいただければと思います。
(BASSのデフォルトはセンターの12時ですが、11時あたりで一気に低音が減衰するので試聴の際は「大体○時で」などと適当にせず、ぜひ微調整をしていただければと思います。)

●A-50との違い
「A-70とA-50の主要な部分は共通」とのことですが、実際に同時比較試聴を行った結果、(少なくとも黒江には)「とても同じようなサウンドには聴こえなかった」ので、「A-70のレポートや評価を見聞きしてA-50を購入するのは(A-50が良い悪いではなく違ったものなので)回避していただくのが賢明と思います」ということを今一度、明言させていただきたいと思います。
(「A-50とA-70は似たような音だけどA-50の方が安い分、やっぱり少し粗いかな…とか、解像度やS/N感に劣るかも」程度の差であれば、そう書かせていただきますので…。)
…ですので、(予算的に)A-50を検討されている方は必ず試聴していただければ幸いです。(できたらA-70との比較試聴もしてみてください!)

●サウンドの捕捉
(前回は特筆し忘れてましたが)S/Nが非常に高いのもポイントの1つで、何も再生していない状態の“無音時”に於ける(スピーカーから「スッー」と小さくノイズが聴こえてくる)残留ノイズもほぼ皆無であり、(音が出ている間は)その無音の空間に(次から次へと)ポッと音が浮かび上がってくるのが目に見えるよう、手に取れるような高い音像感も持ち合わせています。
逆に「1音1音の芯や肉付きはやや華奢な傾向」であるため、TEAC AG-H600や(旧機種の)PRIMAREのような“エグってくる感”はあまり持ち合わせておらず、“鋭利感”はあるけど“暴力的”ではないといった「無骨なマッシブさ、マッチョさ」は求め辛いかもしれません。(低音を上げれば少しカバーできますが…。)
とは言え、女々しいサウンドのアンプではありませんので、アグレッシブなジャンルをお好きな方も安心してお求めいただけると思います。(これで聴くSliPKnoTがめちゃくちゃ気持ちいんです…。)

…と、とにもかくにも(いい加減しつこいのはわかっていますが!笑)、条件付きであれば“黒江的サウンド”の間違いない今年(ここ数年)のベストアンプです。
しばらくは『ザ・ステレオ屋リファレンスアンプ』として長めの付き合いになりそうなので、ぜひ皆さんにもご検討いただければ幸いです。

Comments are closed.