今回はNmodeからリリースされたロングセラーモデルの新機種を紹介させていただきます。
【順当・正統な進化を遂げたコンパクトボディの決定版。】
黒江が個人的にも愛用しているNmode X-PW1 MKIIが終息し、MKIII(MK3)にリニューアルされました。
フォルムが(MK2とMK3ではフロントパネル以外)まったく同じであることから一見するとマイナーチェンジに思えるのですが実際はアンプのエンジン部となる増幅回路が入れ替わっており、内部的には大きなモデルチェンジと言える更新です。
この「エンジン部」というのは1bitアンプと呼ばれるデジタルアンプ技術のことを指していて、(元祖は)SHARP開発の技術が原点となっています。
どんな技術かと言いますと(難しくなるので簡潔にしますが)CDやレコードから送られてきたアナログ信号を高速回路で測定し、デジタル信号に変換してから増幅段を介してスピーカーへと送るのですが、この”測定”の回数が初期の1秒間に280万回からはじまり、第二世代で倍の560万回、第三世代で(第二世代の)更に倍で1,120万回と進化を遂げてきております。
今回のX-PW1 MKIIIには第三世代のエンジンが搭載されており、第二世代エンジンであったX-PW1 MKIIと大きく異なる点となりますが、エンジン部の例えにならうと第一世代は単気筒(一気筒)、第二世代は二気筒、第三世代は四気筒(初期の4倍)と考えれば違いの明白さが分かりやすいかと思われます。
…が、(車やバイクの)エンジンに置き換えると普通に考えれば「馬力が上がる」イメージとなり、アンプの場合は出力(ワット数)が上がることとイコールになりますが、MK3の出力はMK2よりわずかに下がっていますので、ここでのエンジン部はあくまでも「中核となる部分」とお考えください。(そもそもエンジンに例えるのが間違いなのかもですが…。)
口直しになるか分かりませんが、初期の280万回から今回の1,120万回はサンプリング数(の上昇)であるため、(エンジンよりも)メッシュの細かさが向上したイメージの方がしっくりくるかもしれません。
網でも毛糸でも絹糸でも綿糸でも構いません。同じ大きさのザルや袋を編んだとき、糸が太いと糸の総数は減り、糸が細いと系の総数は増えて、目(メッシュ)が細かくなることは容易にイメージできるかと思いますが「目が粗いと小さなものはすり抜けてしまい、目が細かいと小さな粒もこぼさない」といった解釈でよいかと思います。(※メッシュ部=「中核を成す部分」というイメージは無いものですから…。)
以上を踏まえてMKIIとの比較をしつつレポートさせて頂きたいと思います。
■Nmode[X-PW1 MKII]
●一聴して感じられたのは「間違いなくPW1のサウンド、けれど少しおとなしい」といった印象でした。MKII(MK2)がなりふり構わないような鳴り方だったのに対し、MKIII(MK3)は少し落ち着きをもった鳴り方をしています。
●MK2と比べて明らかなのは情報量・解像度・音の広がりが向上している点で、アンプとしての基本性能は間違いなく向上していることが分かります。
●S/N感も少し上がったように感じられますが、それよりも(特に高出力時に於ける)歪みっぽさが(ほぼ)無くなったポイントの方が(個人的には)印象が強かったです。
●(MK2比較ではなく)現行の他メーカーアンプと比べてもスピード感、キレ、帯域バランスは上々で緩さや弛みのないタイトでシャープなサウンドの傾向です。
●MK2と比べるとアグレッシヴさは後退しましたが、その分スムースさは向上しており、(ビシビシというよりは)スーッと1音1音が突っかかりなく出てくるイメージです。
●硬質・寒色・ややドライ傾向であったMK2に対し、MK3は“やや”硬質・“わずかに”寒色・ややドライといった印象で、ややドライな点以外はニュートラルな方向にシフトしています。
〇MK2と比べると情報量が向上したため、少し音の線が太くなり音場が濃くなっています。よく言えば密度感ですが、やや閉塞的に感じられるシーンがあるかもしれません。
〇上記とも連動しているように思えますが、低域の一部帯域が少し膨らんでいるように感じられることがあります。(一部または特定のベース音の時?のみで総じてタイトではあります。)
黒江的好み度:A+
…ということで、かなり完成度を高めてきた印象を持ちましたが、その分のトレードオフでスピード感・キレ・(よい意味での)アグレッシヴさはMKII(MK2)より少しダウンしているように思えました。
これはアンプの原理や理屈的にも(サンプリング数が倍になれば情報量が増え、音が滑らかになるので)妥当ではありますが、従来機に見られた「とんがった個性」が少し薄れてしまったとも言えそうです。
ただ、前述の通り、他メーカーと並べ比べるとそれでもクリアでシャープでスピーディな分類であり、(無難に鳴るタイプに比べると)十分に個性的だと思います。(MK2が尖りすぎていた…のかな?笑)
ですので、締めくくりとしては「あくまでも正当であり、正統であり、正常である」進化を遂げたMKIIII(MK3)であると言わせてください。
こちらのアンプも目下ブラッシュアップポイントを模索中です。お買い求めはぜひ当店(ザ・ステレオ屋)にてお願いいたします。(購入後のチューニングは当店からの購入者限定となります。)