Archive for 12月, 2024

Nmode X-PW1 MKII

火曜日, 12月 24th, 2024

今回はNmodeからリリースされたロングセラーモデルの新機種を紹介させていただきます。

【順当・正統な進化を遂げたコンパクトボディの決定版。】

黒江が個人的にも愛用しているNmode X-PW1 MKIIが終息し、MKIII(MK3)にリニューアルされました。
フォルムが(MK2とMK3ではフロントパネル以外)まったく同じであることから一見するとマイナーチェンジに思えるのですが実際はアンプのエンジン部となる増幅回路が入れ替わっており、内部的には大きなモデルチェンジと言える更新です。

この「エンジン部」というのは1bitアンプと呼ばれるデジタルアンプ技術のことを指していて、(元祖は)SHARP開発の技術が原点となっています。
どんな技術かと言いますと(難しくなるので簡潔にしますが)CDやレコードから送られてきたアナログ信号を高速回路で測定し、デジタル信号に変換してから増幅段を介してスピーカーへと送るのですが、この”測定”の回数が初期の1秒間に280万回からはじまり、第二世代で倍の560万回、第三世代で(第二世代の)更に倍で1,120万回と進化を遂げてきております。

今回のX-PW1 MKIIIには第三世代のエンジンが搭載されており、第二世代エンジンであったX-PW1 MKIIと大きく異なる点となりますが、エンジン部の例えにならうと第一世代は単気筒(一気筒)、第二世代は二気筒、第三世代は四気筒(初期の4倍)と考えれば違いの明白さが分かりやすいかと思われます。

…が、(車やバイクの)エンジンに置き換えると普通に考えれば「馬力が上がる」イメージとなり、アンプの場合は出力(ワット数)が上がることとイコールになりますが、MK3の出力はMK2よりわずかに下がっていますので、ここでのエンジン部はあくまでも「中核となる部分」とお考えください。(そもそもエンジンに例えるのが間違いなのかもですが…。)

口直しになるか分かりませんが、初期の280万回から今回の1,120万回はサンプリング数(の上昇)であるため、(エンジンよりも)メッシュの細かさが向上したイメージの方がしっくりくるかもしれません。
網でも毛糸でも絹糸でも綿糸でも構いません。同じ大きさのザルや袋を編んだとき、糸が太いと糸の総数は減り、糸が細いと系の総数は増えて、目(メッシュ)が細かくなることは容易にイメージできるかと思いますが「目が粗いと小さなものはすり抜けてしまい、目が細かいと小さな粒もこぼさない」といった解釈でよいかと思います。(※メッシュ部=「中核を成す部分」というイメージは無いものですから…。)

以上を踏まえてMKIIとの比較をしつつレポートさせて頂きたいと思います。

■Nmode[X-PW1 MKII]
●一聴して感じられたのは「間違いなくPW1のサウンド、けれど少しおとなしい」といった印象でした。MKII(MK2)がなりふり構わないような鳴り方だったのに対し、MKIII(MK3)は少し落ち着きをもった鳴り方をしています。
●MK2と比べて明らかなのは情報量・解像度・音の広がりが向上している点で、アンプとしての基本性能は間違いなく向上していることが分かります。
●S/N感も少し上がったように感じられますが、それよりも(特に高出力時に於ける)歪みっぽさが(ほぼ)無くなったポイントの方が(個人的には)印象が強かったです。
●(MK2比較ではなく)現行の他メーカーアンプと比べてもスピード感、キレ、帯域バランスは上々で緩さや弛みのないタイトでシャープなサウンドの傾向です。
●MK2と比べるとアグレッシヴさは後退しましたが、その分スムースさは向上しており、(ビシビシというよりは)スーッと1音1音が突っかかりなく出てくるイメージです。
●硬質・寒色・ややドライ傾向であったMK2に対し、MK3は“やや”硬質・“わずかに”寒色・ややドライといった印象で、ややドライな点以外はニュートラルな方向にシフトしています。
〇MK2と比べると情報量が向上したため、少し音の線が太くなり音場が濃くなっています。よく言えば密度感ですが、やや閉塞的に感じられるシーンがあるかもしれません。
〇上記とも連動しているように思えますが、低域の一部帯域が少し膨らんでいるように感じられることがあります。(一部または特定のベース音の時?のみで総じてタイトではあります。)
黒江的好み度:A+

…ということで、かなり完成度を高めてきた印象を持ちましたが、その分のトレードオフでスピード感・キレ・(よい意味での)アグレッシヴさはMKII(MK2)より少しダウンしているように思えました。

これはアンプの原理や理屈的にも(サンプリング数が倍になれば情報量が増え、音が滑らかになるので)妥当ではありますが、従来機に見られた「とんがった個性」が少し薄れてしまったとも言えそうです。
ただ、前述の通り、他メーカーと並べ比べるとそれでもクリアでシャープでスピーディな分類であり、(無難に鳴るタイプに比べると)十分に個性的だと思います。(MK2が尖りすぎていた…のかな?笑)

ですので、締めくくりとしては「あくまでも正当であり、正統であり、正常である」進化を遂げたMKIIII(MK3)であると言わせてください。

こちらのアンプも目下ブラッシュアップポイントを模索中です。お買い求めはぜひ当店(ザ・ステレオ屋)にてお願いいたします。(購入後のチューニングは当店からの購入者限定となります。)

ECLIPSE TD508MK4

金曜日, 12月 20th, 2024

ニューリファレンス(スピーカー)レポート第3弾はECLIPSE TD508MK4を紹介させて頂きます。

【ECLIPSE史上最速、遂に現れたハイスピード卵スピーカー。】

「卵型のスピーカー」と言えば「あれかな」と想像できるかたも多いかもしれません、旧FUJITSU TENからDENSO TENに移籍した「ECLIPSE」は移籍後しばらく(スピーカーメーカーなので文字通り)鳴りを潜め、(途中2021年3月に最少モデルのTD307MK3がリリースされているだけで)新製品の影すら見えない状況が続いていましたが2024年1月、遂に再始動しました。(どこかで聞いたような…。笑)
そんなリブートモデルが今回取り上げるTD508MK4なのですが、黒江的にはこれまでのECLIPSE全モデルに於いて、圧倒的に好印象(勝手ながら高評価)とさせていただきたいモデルとなりました。

レポートの前に「あえて」書き出しておきますが、(ECLIPSEさんにはごめんなさいですが)同メーカーは兼ねてから「正確な位相(周波数特性)」や「立ち上がり」「ハイスピード」を謳い、キャッチコピーの筆頭にも挙げ続けていた印象がありますが、正直なところ旧モデルには(言うほどのスピード感を感じられなかったり、シングルゆえのレンジの狭さだったり、キレがいまひとつだったり…と)黒江的にはあまり満足していなかったのが正直なところです。(※あくまでも黒江個人的にはです。総じて良いモニターであります。)
そういった意味も含め”遂に”といった進化を遂げた卵型のサウンドは感激の一言に尽き、今後しばらくは熱烈に応援させていただきたく思っております。

■ECLIPSE [TD508MK4]
●聴いてすぐに感嘆してしまうほどに旧モデルと比べても圧倒的なスピード感が印象的です。そのフォルムから「卵型」という表現・描写がノーマルかとは思われますが、ハイスピードで一直線に飛んでくるサウンドはもはや「弾丸」バレットサウンドと表してもよさそうです。
●(ユニットが1機のみの、1way・シングルコーンの宿命でもあり)以前はややレンジ感に限界を感じておりました(低音が出づらい、低音を稼ぐと高音が伸びないなど)が、TD508MK4は無理した様子もなくあっけらかんと高低に周波数が広がっていて、シングルコーンであることを(あまり)感じさせません。
●元々のウリでもあった「位相」や「立ち上がり」も非常に良く、1音1音が鋭敏・鮮明に立ち上がります。キレも良く、澱みのないクリアなサウンドが爽快に突き抜けるような体感を覚えます。
●(前回のREVIVAL AUDIO SPRINT 3はドライ気味の音色傾向でしたが)音色傾向はやや硬質・やや寒色・少しウェットさがあります。固くて、冷たくて、水気があるとなると「氷」を連想しがちですが、そこまで極端な表情は無く、強いて言えば「淡々とクールに鳴っている」といったイメージで音源・ソースに忠実な自然体サウンドが基調となります。
○音圧で押してくるようなサウンド傾向ではないため、アグレッシヴさはあまり出せません。前述に「淡々」とあるように全体的に落ち着きがあり、ダイナミックさを得意とする傾向にはありません。
○(こちらもユニットが1機の)シングルコーンゆえの特徴ですが、音場特性はやや狭く、スケール感のある傾向ではありません。加えて、良くも悪くも(長すぎると無駄に、短いと淡白に感じられる)余韻を出してくる傾向ではないため広大なサウンドステージは不得意分野(かな)と考察しております。
○上記にも関連していますが、指向性が強めのためセッティングがシビアでリスニングポイントが限定されます。(&音のスイートスポットが小さいので、やや箱庭的なサウンドになりやすいです。)
黒江的好み度:S-

…と、弱点と感じられる点はいずれもシングルゆえの仕方無し、止む無しなことであるのでこれらを除けばかなり”完璧”なサウンドに近い印象を受けました。

とにかく一聴した時の驚きは強く「何をどうしたらここまで一気に改善されるんだ?」といった感想が残ったのを覚えています。
このレポートを書くにあたり(いつものことですが)はじめてオフィシャルページを見に行ったのですが、「見ておいて正解」なるほど、と合点がいきました。
ここではザッとだけ触れておきますが、まず筐体(卵型のボディ部・エンクロージャー)の容積を増やしたことでレンジ感(帯域)をアップ(音の籠りも改善?)されているようで、ユニットも(ほぼフルモデルチェンジ?)不要残響低減や制動性がアップしているようです。
(レンジ感は当然のことですが、不要残響低減は前述の「無駄な余韻」・制動性は「立ち上がりやキレ」と結びつくので分析・印象と合致していました。)

詳細はオフィシャルページにて
https://www.eclipse-td.com/products/td508mk4/index.html

(個人的な感想ですが)「最強目玉おやじ」ことECLIPSE TD508MK4すっかり欲しくなってしまっております。
なお、こちらも先日のREVIVAL AUDIO SPRINT 3同様にオリジナルチューニングを検討中ですので、お買い求めはぜひ当店(ザ・ステレオ屋)にてお願いいたします。(購入後のチューニングは当店からの購入者限定となります。)

REVIVAL AUDIO SPRINT 3

木曜日, 12月 19th, 2024

今回は(先日のニューリファレンスで挙げた)REVIVAL AUDIO [SPRINT 3]をレポートさせて頂きます。

【アグレッシヴ&ハイスピード、そして秘めたるポテンシャル。】

既報の通り、新たなリファレンススピーカーは3機種となったのですが、同時期に2機種・3機種がリファレンスとなることはそこまで珍しくはありません。
(つい数年前まではVienna acoustics・ATC・PMCが3機種揃い踏みしておりましたし、過去にはKlipsch・DALI・その他などの時期もありました。)

ただ、(前回も述べたように)昨今の情勢を鑑みると世の中的にもオーディオ業界的にも、これまでとは明らかに状況が異なり以前のように矢継ぎ早に新製品が出てくるような勢いもなく、発売される新製品は高騰を繰り返す一方となってしまい、これまで以上に「買いやすさ」からは遠ざかってゆくばかりでした。

そんな中で新たなシーズンを迎えたわけですが、もちろん当店らしく(良いと分かっていても高価格過ぎるものは避け)できるだけ価格を抑えたラインナップを意識してセレクトさせていただいておりますのでビギナー(から少しランクアップをしたい)の方から幅広い方の参考になれば幸いです。

前置きが長くなりましたが、今回のREVIVAL AUDIO SPRINT 3は今シーズンの中に於いても黒江のファーストチョイスとなっているスピーカーです。

■REVIVAL AUDIO [SPRINT 3]
●一聴して分かるアグレッシヴ系のサウンドはユニットの前方(リスナー)に向かって開放的に飛び込んでくる(放たれる)印象が強く、惑いの無い疾走感に潔さを感じます。
●前述に「疾走感」とあるようにスピード感も高く、アグレッシヴとハイスピードの間の子(ややアグレッシヴ寄り)と言えるポジションにあります。
●良くも悪くも癖っぽさを感じさせず、アンプから送られてきた信号(サウンド)をそのままに発声するようなストレートな素直さ、シンプル(イズ ベスト)さがウリと言いたくなるほど嫌な抵抗(反抗)のない鳴りっぷりの良さがポイントです。
●サウンド傾向はやや硬質寄りですが、キンキンとした硬質感は無く、硬すぎない傾向にあります。逆にウェット感はほぼ感じられず、ややドライな傾向に位置していると思われます。
○そのため、シャープさやキレはHAYDN並みとはならず(そもそもHAYDNは価格が1.5倍ですので比べるのがかわいそうですが…)、ディストーションの歪みの粒子感などでは一歩及ばずといったところです。
●代わりにベースやバスドラのアタック感・躍動感はHAYDNよりもご機嫌な鳴り方となり、中低域に魅力を感じる方は少なくないように思います。
○鳴りっぷりの良さの反面(オフトレード)でやや粗っぽい(荒っぽい)傾向にあり1音1音が前方に向かってくる(飛んでくる)分、奥行き側の音場は薄くなります。
○総じて分かる通りですが、繊細さ、分解能を武器にシャープでクリアな鳴りを得意とする傾向ではありませんが、前述の通り(上流からの流れ次第で素直に鳴ってくれる)レスポンスの良いサウンド傾向となるため「伸び代」の扱い次第では「もうひと化けしそう」ではないかと考察しております。
黒江的好み度:S- (~S)

…ということで久しぶりに鳴らしがい(馴らしがい・慣らしがい)のあるスピーカーに出会った気がしています。
シャープさとスピードは上流からの流れでブラッシュアップ出来そうと考え、上流の電源・ケーブルの吟味などを進めておりますが、その一方ではスピーカー自体に(改造レベルでは無い)何か手を加えられないかと模索中です。
(※もう少し全体的に粒立ちを上げてバタつきを抑える、良い意味で落ち着かせるだけでも飛躍的に向上しそうという考察です。)

(何か手立てを見つけた際は)当店でお求めの方には後にアップデート施工(またはパーツ供給など)をサービスさせていただきますので、(当レポートを参考にされた際は)ぜひ当店「ザ・ステレオ屋」でお求めください。

New Reference. そして再始動します。

金曜日, 12月 6th, 2024

概要は表題の通りですが、ようやくの再始動・再起動となります。

色々とありすぎて一言ではなかなか表すことができそうにないのですが、大きかったのはVienna acoustics [HAYDN GRAND Symphony Edition]の終息、そしてリニューアルされた新型HAYDN(SE Signature)が(構造の変化も伴い)これまでのサウンドからはかけ離れてしまったことでリファレンスとなるスピーカーを失ったことが挙げられます。

折しも世の中はコロナ禍を経て、戦争・円安・物価高・不況(業種間格差)・国政の変化や不安定化などなどと、先の見通しがつかず、当業界も不安定さが目立つ情勢が続いておりました。
そんな事情もあって元々あった製品(とその後継機種)は次々と値上がりし、または前述のように元来のサウンドから遠ざかってしまうプロダクトが多く、新しいスピーカー探しは思いのほかに大変なものとなりました。

…ということで、今回は機種名だけのお披露目となりますが、今後は以前のようにブログ(テキスト)や動画でレポート・紹介をさせて頂きますのでご参照よろしくお願いいたします。

ザ・ステレオ屋 New Reference.

SPEAKER :
REVIVAL AUDIO [SPRINT 3]
KEF [LS50 Meta]
ECLIPSE [TD508MK4]

AMPLIFIRE :
Nmode [X-PW1 MKIII]

D/A Converter :
MYTEK [LIBERTY DAC II]

SYSTEM AUDIO :
TRANSPARENT SOUND [TRANSPARENT SPEAKER]
TRANSPARENT SOUND [SMALL TRANSPARENT SPEAKER]
TRANSPARENT SOUND [Light Speaker]

TURNTABLE :
TRANSPARENT [TRANSPARENT TURNTABLE]

& Other…

とりあえずのザっとリストですが、当店のリファレンスと現行品でおすすめしているアイテムの一部です。
様々聴き比べた結果、スピーカーは3者3様の良さがあるということで3ラインナップとなりました。

少しずつレポートを進めますのでまたご覧いただけると幸いです。