今回は(安価なモデルながら)今現在もっとも評価しているアナログプレーヤーのEssential IIに、ちょっとエディションの異なる“腹違い”な兄弟機(兄機)が登場しましたので弟機と聴き比べてみました。
【○いElemental、■いEssential II。】
本国のPro-Jectメーカーページをご覧いただくと分かりますが、Elementalには(今回紹介する)透明なプラッター(レコード盤を載せる回転台)のアクリルバージョンと(おそらく)Essentialと同等のMDFバージョンがあるようです。
このうち、現在、国内(輸入元ナスペック経由)で入手できるのはアクリルタイプでありますが、兄弟機とは言えど音の質感や傾向の差異が大きい2モデルとなっておりますので、ぜひぜひこのレポートを参考にご検討いただければと思います。
まず、両機の違いは目で見て明らかです。
Elementalはとにかく丸い(○い)です。そして(マットを乗せないでいると)白っぽい透明なのでとっても○(白丸)な感じです。
○の両サイドにモーター部とアームベース部がポツンポツンとくっついているような感じで『非常に無駄のないエレガントなデザイン』といった印象です。
次にEssential IIに目をやると、とにかく四角い(■い)です。(当店のはBLACKです。)
『四角い板にプラッターとアームを必要最小限の設置面積で搭載した』だけのシンプルさで、悪く言えば無味乾燥なデザインといったところでしょうか。
また、(特に肉厚・重厚な造りのアナログプレーヤーが多い中、)Essential IIはプラッターやボディなど全体的に“薄い”といった印象も強く残します。
■Pro-Ject [Elemental] vs [Essential II]
●(以前のレポートの通り)Essentialは非常に癖の少ないサウンドであり、実に素直な出音を提供してくれます。
●(価格を感じさせないくらいに)S/N感が高く、(スー・サー・プチッというようなレコード特有の)トレースノイズ・スクラッチノイズも少なく、付帯音に感じられる要素がごくごく少ないため、(アナログっぽさはあまり感じられませんが、)クリアで明瞭、見通しの良いサウンドステージを展開します。
●かと言って、(情報量が欠如したような)スカスカした感じではなく、十分な音の濃さ、強さ(ダイナミクス)、レンジ感も出してくれていて、正にシンプル・イズ・ベストなサウンドとなっています。
○対するElementalは“しっとりと豊潤”さを感じさせる、滑らか、マイルド、ウェットな傾向にあり、(コテコテのアナログプレーヤーには及ばないものの)アナログらしい印象のサウンドを聴かせてくれます。
○S/N感やダイナミクス、レンジ感はEssentialと差異なく、(前述の通り)そこまでコテコテの音作りではないので、(プレーヤーの音癖を)押し付けられるような強引さがなく、色々なジャンルを気軽に楽しませてくれます。
○かっちりし(すぎて)いる(?)Essentialに比べて、やや先丸で伸びや余韻のある傾向となっていますので、歌モノなどは生々しさがより強調されてハマりやすいのではないかと思います。
なお、初見では『筐体以外はほぼEssentialの流用かな、でも筐体とターンテーブル(の素材)だけでも変わるだろうな…』と思っていたElementalですが、よくよく見るとアームも(作りはそっくりですが)太さが異なっていたり、板の代わりになる筐体ベース部の材質感が異なっていたり…と結構違うものなのだな…と気が付かされました。
(つまり、Essentialの■を○にしたのが=Elementalという簡単なものではなかったということです。)
勝手な推測・考察となるのですが、両機のサウンドが異なる理由はやはり筐体のシェイプとターンテーブルの材質の影響が強いと考えており、よりリジットなEssentialに対して、丸みを帯びていて且つ面積・体積の小さい筐体が、よりアクリルの柔らかさを引き立てている…といったことが非常によく表れていることと思っております。
(あえて近い価格でこの2機種を揃えてきたメーカーが「このサウンドの違いを楽しんでもらうため」であるとしたらすごくいいセンスだな…とも。)
(デザイン先行でElementalという方もいらっしゃるとは思いますが、音あってのプレーヤーです。できましたらちゃんと両機を試聴して選んでもらえれば…と思います。)
…ということで、(価格帯の並び方などから)兄弟機と述べさせていただいてはおりますが、実質的には従兄弟機といった感じの両機ですので、無機質モニター派はEssentialを、アナログらしい派ならElementalをお勧めしたいと思います。
(どちらもコストパフォーマンスに優れた良作であることには自信を持って太鼓判押させていただきます!)
そろそろアナログも聴きはじめてみませんか。
P.S.
当レポートは“USB対応フォノイコライザー【無し】”モデルのレポートとなりますのでご注意ください。
フォノイコライザー搭載モデルには(搭載のフォノイコの音でガラリと変わってしまうので)レポート内の一切の分析や感想が当てはまりません。
また、この製品を使用するにあたっては別途フォノイコライザーが必要になります。
(当レポートは当店リファレンスのTRIGON Vanguard IIを使用しております。)