Archive for 11月, 2012

Pioneer A-70 [postscript]

水曜日, 11月 21st, 2012

(採用にあたり条件付きながらも)数年ぶりに『ザ・ステレオ屋リファレンスアンプ』の座を射止めた「Pioneer A-70」ですが、当店のユーザーさんからも一様に好評をいただいておりますが、ぽつぽつと購入された方、ほぼ購入決定の方も増えてまいりましたので前回に書ききれなかったことを幾つか追伸させていただきます。

●USB接続やデジタル入力でのサウンド
原則的には前回のレポートの通り、「ハイスピード・クリア系・硬質傾向・エッジ感・キレ」といった“アンプのベーシックなサウンド”を感じさせますが、DACを経由するためかややサウンドに変化(エッセンス・スパイス)が乗っているようです。
USBやデジタル接続時のサウンドは(ライン入力時に比べ)「ややおとなしく、平面的」といった印象で、きれいではあるのですが少し棘が取れて丸くなる傾向なのでUSB接続などをメインに検討されている方はご注意ください。(スピードやキレも少し落ちます。)

●BASSの絞り加減
前回は“9時半~10時”と書かせていただきましたが、少し大げさでした。(ごめんなさい。)
(黒江的)ベストは“10時~10時半”あたりで、繋げるスピーカーの元々の低音量によって9時半や11時あたりをお好みでお使いいただければと思います。
(BASSのデフォルトはセンターの12時ですが、11時あたりで一気に低音が減衰するので試聴の際は「大体○時で」などと適当にせず、ぜひ微調整をしていただければと思います。)

●A-50との違い
「A-70とA-50の主要な部分は共通」とのことですが、実際に同時比較試聴を行った結果、(少なくとも黒江には)「とても同じようなサウンドには聴こえなかった」ので、「A-70のレポートや評価を見聞きしてA-50を購入するのは(A-50が良い悪いではなく違ったものなので)回避していただくのが賢明と思います」ということを今一度、明言させていただきたいと思います。
(「A-50とA-70は似たような音だけどA-50の方が安い分、やっぱり少し粗いかな…とか、解像度やS/N感に劣るかも」程度の差であれば、そう書かせていただきますので…。)
…ですので、(予算的に)A-50を検討されている方は必ず試聴していただければ幸いです。(できたらA-70との比較試聴もしてみてください!)

●サウンドの捕捉
(前回は特筆し忘れてましたが)S/Nが非常に高いのもポイントの1つで、何も再生していない状態の“無音時”に於ける(スピーカーから「スッー」と小さくノイズが聴こえてくる)残留ノイズもほぼ皆無であり、(音が出ている間は)その無音の空間に(次から次へと)ポッと音が浮かび上がってくるのが目に見えるよう、手に取れるような高い音像感も持ち合わせています。
逆に「1音1音の芯や肉付きはやや華奢な傾向」であるため、TEAC AG-H600や(旧機種の)PRIMAREのような“エグってくる感”はあまり持ち合わせておらず、“鋭利感”はあるけど“暴力的”ではないといった「無骨なマッシブさ、マッチョさ」は求め辛いかもしれません。(低音を上げれば少しカバーできますが…。)
とは言え、女々しいサウンドのアンプではありませんので、アグレッシブなジャンルをお好きな方も安心してお求めいただけると思います。(これで聴くSliPKnoTがめちゃくちゃ気持ちいんです…。)

…と、とにもかくにも(いい加減しつこいのはわかっていますが!笑)、条件付きであれば“黒江的サウンド”の間違いない今年(ここ数年)のベストアンプです。
しばらくは『ザ・ステレオ屋リファレンスアンプ』として長めの付き合いになりそうなので、ぜひ皆さんにもご検討いただければ幸いです。

Pioneer A-70

木曜日, 11月 1st, 2012

新製品時期ということで立て続けになりますが、ようやく巡り会えた『ザ・ステレオ屋NEWリファレンスアンプ』を今回はレポートさせていただきます。
(2つ前のエントリーではモニターの黒江的ヒット「DB1 Gold」をレポートしています。)

訳あってちょっとしたストーリー仕立て&毒舌の応酬となっておりますが、最後まで暖かい目で読んでやっていただけると幸いです。(Pioneerさん、気を悪くさせてしまったら申し訳ございません…。)

【その豹変ぶりは、まるで“みにくいあひるのこ”?!】

「はじめまして」…と開封された新しいアンプを見て、無意識の内に「半端なくカッコ悪いな」…と、口をついてしまったくらい(個人的には)最低クラスのデザインであり、その第一印象は最悪のまま試聴に入ります。

いつものようにチャチャッと繋いで、パパッといつもの曲を聴いた直後、(外観と同様に)無意識の内に口をついていました。
『なんなの?この低音域の狂ったようなバランスは』…と、そのくらい低音が耳につくバランスの悪さです。(もっとひどいものもありますが、N-50の“とっても好きだった”テイストを期待していたあまりにそのガッカリ感が半端なかったのです…。)

ふと、(Pioneerさん社内でのテストか、雑誌社さんか、他店さんなどで聴かれていたのかもしれないと思い、)「ひょっとしてイコライザーいじった状態になってない?」…と、(アンプのそばに居た)弟分にたずねます。

「いえ、つまみ位置はセンターですし、(EQなどをバイパスする)ダイレクトがオンになっています…。」
「えー、マジかよ。これが(このアンプの音作りをした人が思う、周波数帯域が)フラットなのか。」…と、首をかしげながら様々な考えを巡らせます。
「待てよ?これがまだ試作機で、このトーンコントロール(イコライザー)が間に合わせの物とかかもしれないよ?」…と、今度はPioneerさんに念のための確認をお願いします。

数分の電話の後、「今ここにあるのは、ほぼ量産品とイコールで間違いないようです…」とのこと。
「うわー、デザインも野暮ったいけど、音も野暮ったいなぁ。デザインにも音にもセンスが感じられないよ…。」なんてボロカスに言いたい放題のわたくしです。(陳謝)

…と、ここまでわずか数分。まだパッとしか聴いていませんでしたので(特徴をしっかりと把握するために)今一度の試聴です。(もちろん、すでに半分“心ここに非ず”の状態で。)
やはり低音が気になります。…が、(低音にばかり気を取られるくらい)気になる低音を一旦(耳の中で)削除して聴き始めたとき、(推理物を解決するときのような)閃きを覚えたのです。
『これ、低域以外はかなりいいセン行ってるかも…。』
…となれば試すことは1つです。

『ちょっとイコライザー(EQ)でBASSを絞ってみて!』
…当然と言えば当然なのですが、EQ特性がおかしいと思ったのなら、EQで調整してあげればよいのではないかと。
(ただ、僕自身も然りですが、オーディオユーザーの多くはこの“EQをいじる前提でアンプを選ぶ”ことを好ましく思わない傾向にありますので、やや抵抗感のある方法ではあるのですが。)

…ということで、ここからはいつものレポートです。ただし、BASSを絞った状態でのレポートとなりますのでご注意ください。

■Pioneer [A-70]
●いわゆる“ハイスピード系”であり、S/N感・分解能が高く、音の立ち上がりがスピーディで明瞭、1音1音のエッジも明確でキレのあるサウンドです。
●(黒江の好む)ピークを丸めないストレートなサウンドであり、ディストーションのガリガリした刺々しさ、シンバルのジャリジャリとした硬質感などがしっかりと再現されています。
●サウンドは寒色系、硬質系ですので「聴き疲れる」「キンキンする」「耳鳴りがする」など、好ましく思われない方も多くいらっしゃる傾向ですのでご注意ください。
●ディストーションギターやベースの巻き弦をピッキングする際の(ピッキング)アタック音、スネア・バスの(特に皮をピンと張った)アタック音なども得意分野であり、ステレオ感も(押し付けがましいセパレーションではなく)高いので、ディストーション&フランジャーサウンドなども絶品です。
●上下左右の音場・サウンドステージに広がりのあるタイプではありません。前後の奥行感は良好で(先日のDB1 Gold同様に)眼前に迫りくるというタイプではありませんが、しっかりと明瞭に前方に定位するサウンドです。
●ボーカルはやや無機的ではありますが、音像(口もと)がやはり明瞭で、シャウト系ボイスの歪みは抜群です。(低音デスボイスやグロウルはやや軽い感じになる印象です。)
黒江的好み度:S (BASS DOWN)
黒江的好み度:C- (DIRECT)

…と、久しぶりに黒江的には『ほぼ完璧なサウンド』のアンプが登場してくれました。
(ここまで高く評価したのは1つ前が「ONKYO A-7VL (ただし同軸デジタル接続時のサウンドのみ)」だったので、奇しくも「条件付き」の推奨ではありますが。)
振り返ると条件無しに(ここまで強く)オススメしていたのがもう5年くらい前の「TEAC AG-H600 (すでに生産完了)」でしたので、本当に待望のアンプとなりました。
アンプで悩まれている方はぜひご検討いただければと思います。(ルックスとEQをいじるのが許せるなら!笑)

ちなみに、BASSは通常(DIRECT)が時計の短針の12時ですが、黒江の推奨値は時計の短針が9時半~10時くらいのポジションです。(10時半~11時とお好みのポジションを探してください。)
当店以外で試聴される方も、ぜひBASSを調整して(DIRECTをオフにして、BASSのみを下げて)聴かせてもらってください。(他店さん、ご協力お願いします。)
なお、DIRECTをオンにするとS/N感や解像度が一段向上するものが多いですが、(幸いにして?)A-70はそこまでの変化を感じられなかったので、BASSを下げての常用でのデメリットは皆無であるとお考えいただいて結構です。

P.S.
BASSを絞って聴き始めた瞬間、さっきまでの悪態が一変「スゲーよ、このアンプ。めちゃくちゃいいじゃん!」と歓喜の連続だったことはご想像の通りです。(Pioneerさん、許してください。)
あらためて見るとルックスも無骨でなかなかいいんじゃ?
(デザインそのものはそこまで嫌いじゃないので)黒江的にはブラックモデルだったら全然ありなんですけどね。
Pioneerさん、デフォルトでBASSを下げて、ブラックボディ(インシュレーターもブラック)の“ザ・ステレオ屋Ver.”を出しませんか?!

最後に…弟機のA-50は「A-70とは印象の異なるサウンド」でしたので、「クラス下だから大体似たような音が出るだろう」という推測ではご購入されないようにご注意いただきたいと思います。