Archive for 11月, 2011

ネットワークオーディオ report 4 【LANケーブル編】

金曜日, 11月 11th, 2011

タイトルは異なりますが、昨日の続きです。

さて、「これにて一件落着」と思っていたのですが、もう1つ妙に引っかかります。
「NASの音と(PCとの)USB接続の音が何でこんなに違うんだろう…。」
個人的には『長いLANケーブルやハブ・ルーターを介する分、音質が低下するネットワークオーディオ』に対し、『OSやPC/Macという(音質に悪影響を及ぼす)コンピューターというハードを介したPCオーディオ』は一長一短のような気がしているので、“どちらかが極端に高音質となる”のは少し違う気がしているのです…。

これまた、ふと思い立ちます。
「そういえばルーターとNASを繋いでいるLANケーブルがものすごーくチャチなモノだったなぁ…」と。

そこで(まずはルーターとNAS間を)FRUTECHのLANケーブル『LAN-10G』とTIGLONのLANケーブル『MGL-1000L』に交換して聴き比べてみることにしたわけですが…。
(他のブランドも数種試していますが、文脈的に端折っていますのでご容赦ください。)

「…………(USBケーブルに続いて)何で?何で音がこんなに変わるの…………。」
しばらく唖然としてしまいました。

…が、よくよく考えると膨大なデータを送受信するための大動脈とも言えるケーブルなのですから、USBよりは変わることにも頷ける気がします。
(しかも、交換前のケーブルは随分前に購入したハブか何かの付属品でとってもボロな「Category 5e」に対し、『LAN-10G』と『MGL-1000L』は「Category 6a」と「Category 7」ですしね…。)
現に、LANケーブルを交換した後はNASとのやりとりのレスポンス(スピード)も飛躍的と言っても良いくらいに向上しています。
(交換前が「モッタリ」だとすれば、交換後は「サクサク」って感じです。)

ただ、やっぱりそれでも納得できないのは「音質(特に情報量・S/N感・解像度)が向上するのはともかくとして、音の傾向やバランスが(ケーブルのブランド毎に)変わる」ことです。
USBケーブルの時と同様に、LANケーブル(内)で高音や低音、シンバルの音やディストーション、クラッシュやシャウトを選り分け(聴き分け)られるはずもないのに、こういった1音1音の出音がケーブルごとに異なるのです。

…ので、“納得できない”とは言いつつも、特に気に入った2本を軽めにご紹介してみます。

■FRUTECH : LAN-10G
『同社のUSBケーブルやロジウムメッキACプラグのような、シャープさとキレ、スピード感。』
●やや明るめで、スパッとした鳴りです。
●低域はタイト、高域はややキラキラ(ギラギラとも言えるかも)とした輝度の高いタイプ。
●ハッキリ、クッキリの明瞭系。
●音場はやや広めな感じです。
●バッと前に向かって来るサウンドですが、鳴りっぷりが良いという傾向ではなく、スピードとキレで突き抜けるような傾向。

■TIGLON : MGL-1000L
『S/N感・解像度・情報量が高く、中庸で堅実なサウンド。』
●(LAN-10Gなどと比べても)頭抜けてS/N感が高く、曲中の静寂感や微弱音が非常に繊細に再現されています。
●LAN-10Gよりもトーンは落ち着いた感じ(暗め)で、スピード感も中速。
●低域はやや(濃く・太く)厚めで、ガチっとした輪郭を描くタイプではありません。
●高域の分解能は抜群と言っても良いと思います。(若干、伸びが足りませんが…。)
●音場はやや狭い感じです。
●音の傾向は少し控えめですが、安定感が高くてバランスも良く、定位感も良好です。

…と、要約すると(双方ニュートラルに限りなく近い前提で)「キレやスピード感に長ける(やや)ライブなLAN-10G」と「解像度やS/N感に長ける(やや)デッドなMGL-1000L」といったところでしょうか。
(同じく双方ニュートラルに限りなく近い前提で、ややコールド[寒色系・硬質系・無機的]寄りなLAN-10G、ややウォーム・ホット[暖色系・重厚系・有機的]寄りなMGL-1000Lとも言えるかもしれません。)
ただし、双方ともに黒江が採用を決めたくらいですので、基本的には「ゆるゆる・もったり・味や化粧の濃い」傾向ではなく、モニター的なサウンドであることには間違いありません。

…で、なぜ2本いっぺんに紹介したかと言いますと「どちらか一方に決められなかった」ので『これらをハイブリッドして使用するのがベスト』という結果となったためです。
なので、結果的には「LANハブからPCへはLAN-10G」を用い、「NASとLANハブの間はMGL-1000L」を用いて、両者を足して2で割ったサウンドで落ち着いています。
(MGL-1000Lが高いから短くて済むところに入れたのは内緒です!笑)

くどいようですが、USBケーブルといいLANケーブルといい、(こんなに音が変わること自体)黒江自身がなんだか未だに理解できないのですが、変わるものは変わるので自信を持ってオススメしたいと思います。
僕と同様に“疑って仕方がない”という方にはお貸し出しなども出来るものがございますので、まずはお問い合わせください!

Pioneer N-50 [postscript]

木曜日, 11月 10th, 2011

昨日に書いたばかりの「Pioneer N-50」レポートですが、もう少し書き足させて頂こうと思います。

【クールとワイルドが同居したようなアグレッシヴサウンド。】

まずはじめに、少しお詫びを申し上げなければいけません。(お詫びしたり、フォローを入れるような内容ではなかったですが。)
この「Pioneer N-50」を昨日のレポートでは『(音の傾向は好きだけど)音質は価格相応・価格なり』と断言しましたが、もう少し褒めてあげても良さそうです。
いえ、黒江的にはちょっと褒めてあげたいです。「Pioneerさん、よいモノ作ってくれました!」と。

ことの経緯はと言いますと…
本製品は『ネットワークプレーヤー』という主眼である製品ということもあって、実は試聴の際にはNAS経由での再生ばかり聴いておりました。
レポートを書くにあたって十分な情報が得られたので昨日のレポートを書いたのですが、ふと「USB接続をちゃんと聴いてないかも」と気が付きます。

※当店では、例えば当機のような「USBメモリ(前面ポート)・USB DAC(背面ポート)・ネットワーク(NAS)」などといった、同じフォーマット(MP3・WAV・FLAC・AACなど)が聴ける装備がある場合、すべてのモードで同様のファイル(例:“XXXXXXXXXXXXX”という曲で44.1kHz/16bitのWAVファイル)で聴き比べるのが基本です。(当然ですが。)

こうなると気になって仕方がないので、レポートをUPしてからすぐに再び聴き比べをしてみたところ…。
「あれ?USB接続がめちゃくちゃ音いいじゃん…。」

…ということで、NAS経由とUSB DAC(PC)経由で同じ曲を聴き比べた印象を述べていきます。

●“やや速い”感じでハイスピードではないと書きましたが、なかなかのハイスピードサウンドです。(「ぶっちぎり」ではないけど、満足できる感じです。)
●気になっていた抜け、キレもだいぶん良好な感じです。
●S/N感も1ヴェール、2ヴェール拭ったように見通しが改善しましたが、解像度とレンジ感はそこまで改善せず。
●全体的な音の印象・傾向はあまり変わらず、より洗練・ブラッシュアップされたサウンドに。

専用ドライバーが優秀なのか、今のところ非公開?のDACチップ(Pioneerオリジナル?)が優秀なのかは分かりませんが、しばらくアレコレ色々な曲を聴いてしまうくらいイイ感じです。

もう一回まとめてみます。
●音の傾向は「元気・アグレッシヴ・ハイスピード・タイト」といった感じ。
●(Essensioなどの高価格帯と比べると)S/N感・レンジ感・解像度にはやや難あり。それでも価格には見合ったクオリティ。
●エッジを立ててきたり、鋭い切れ味のあるサウンドではなく、アタックのしっかりしたパンチのあるサウンド寄り。(“寄り”とあるように、もちろんエッジがボケているワケでもなく、キレも十分あります。)
●低域・高域ともに伸びきってはいないものの、帯域バランスも良好で、定位感も上々です。
●AirPlayが地味に便利です。(^-^;
黒江的好み度:A(~A-)

…と、見出しの通り、基本的にはモニター調でクールに淡々と鳴っている感じですが(価格の分、少し粗っぽいせいか)、所々にちょっとヤンチャな感じがあるのが個人的には好きです。
「Essensioはまだちょっと高価だな…」という方、マルチな機能が欲しい方、とりあえずUSB DACだけでも欲しい方(他の機能は手にされてから有用なことに気が付くと思います)などに、ちょっと強めにオススメしておきます。

※その後、NAS経由の音もかなり改善するプロセスがありましたので次回のレポートに。

製品紹介ページ
http://pioneer.jp/components/networkaudio/
専用ドライバーダウンロードページ
http://pioneer.jp/support/download/home/n-50/

Pioneer N-50

水曜日, 11月 9th, 2011

先日の「LUXMAN DA-100」に引き続き、2011年秋冬モデルのUSB/ネットワーク系のDAC(D/Aコンバーター)を数機種ご紹介したいと思います。

【現時点でのネットワークオーディオ(エントリーモデル)大本命!】

もちろん『黒江的』にですが、見出しの通り現時点でのラインナップの中では非常に僕の好みのサウンドとなっています。

●音質面に関しては解像度とS/N感に加えてもう一抜け欲しいところなので、「(価格が)倍以上もするような機種をも凌駕する」といったような圧倒的なクオリティではありません。
●…が、『こもってる・にごってる』などといった『ちょっと聴けたものじゃないサウンド』ではなく、最低限のS/N感や解像度を持っており、価格よりは高いクオリティの印象です。
●サウンドはとってもストレート(素直)な印象で味付けや癖が非常に少なく、どんなジャンルも録音に逆らわず、違和感を感じさせないサウンドです。
●比較的モニター調であり、低音はタイトにくっきりと鮮明、高音はやや抑え気味ではあるものの、プレゼンス(高音の強調)を効かせたような“いやらしさの感じられるサウンド”ではないので、いかにも「いい音でしょう?」なんて感じのサウンドがお好きでない方には好印象だと思われます。
●自然な中にもメリハリがあって、ちょっと元気な感じ。
●(黒江の大好きな)スピード感は“やや速め”といったところで(これまたお好きな)“キレッキレ”といったタイプではなく、“ビシビシッ”とクッキリ・しっかり・ハッキリと畳み掛けてくるタイプです。
●音の繊細さ、分解能・解像度はもう少し欲しいところです。(…が、この価格なら十分です。)
●繰り返しになりますが、強いて言えば解像度とS/N感、総じて抜けがもう少し良ければ…といったところでした。

なお、この「N-50」は豊富な入出力を持っておりますが、メディアファイルを再生した場合は(前面の)USBメモリーが最も音質が良好で、PCやMacとのUSB接続とNAS経由に関しては環境次第といった感じです。

操作のレスポンスは上々で、(※一足先にレポートをUPした弟分のblogでサンプル機の操作レスポンスを量産機と誤解して「非常にレスポンスが悪い」と書いてしまいました。この場を借りて訂正・お詫びいたします。)評価の高かった「marantz NA7004」とも双璧をなすレベルですが、肝心の選曲メニュー時の操作性・操作感が今一つなので紹介しておきます。
この「N-50(N-30も)」は本体のディスプレイは“リスト部が”4行表示となっているのですが、例えば曲名を表示させた場合に…
1.AAAAAAAA
2.BBBBBBBB
3.CCCCCCCC
4.DDDDDDDD
…と表示され、4曲目から下のリストにアクセスすると…
5.EEEEEEEE
6.FFFFFFFF
7.GGGGGGGG
8.HHHHHHHH
…と、ページ送りになってしまうのです。
つまり、
3.CCCCCCCC
4.DDDDDDDD
5.EEEEEEEE
6.FFFFFFFF
といった、好きなところでリストを止められないので、感覚的な操作が出来ません。

なお、iPhone/iPad/iPod touch用のアプリでも同様の操作感であり、iPhone/iPad/iPod touchのディスプレイにはまだ余白があるものの4曲(4アルバム・4アーティスト)ずつしか表示されません。
(※最初は「なんでこんな仕様に…?」と思ったのですが、このアプリは本体とシンクロさせて本体の表示をアプリに送っている仕様であると気が付きました。)
修正の余地および可能性は高いと思われますが、本体のファームウェアとアプリを連動してアップグレードさせなくてはいけないので少し時間が必要かもしれません。
(Pioneerさんに期待しておきましょう。)

もう一つ言うならば、この機種には(テレビと同様に)主電源とスタンバイ(スリープ)機能があり、リモコンや一定時間の無操作でスタンバイ状態に切り替わるようになっていますが、スタンバイ状態から「本体のどのボタンを押しても復帰できない!&アプリからも復帰できない!」という残念なところがあるので、こちらもアップデートに期待したいところです。

総括としては、音質・操作性などには一定の不評があるものの、価格を考えれば満足のゆく仕上がりです。(特に音の傾向が好みなので。)
黒江的にはNASやPC経由ではそこまで音質にはこだわらず、(リビングなどで)気軽に聴ける方が良いと思っているので一気に購入意欲が湧いてきてしまいました。
ネットワークはもちろん、USB DACとしても使えるし、DVD/BDレコーダーなどからデジタル入力も出来るしなのでマルチな活躍をしてくれると思います!
みなさんも、ぜひ要チェックでお願いします!

N-50/30用アプリの表示例1:下の余白がもったいない…。

N-50/30用アプリの表示例1:下の余白がもったいない…。

N-50/30用アプリの表示例2

N-50/30用アプリの表示例2

LUXMAN DA-100

水曜日, 11月 2nd, 2011

話題の新製品を軽めにレポートいたします。

【ほんのりLUXトーンの省スペース実力機!】

はじめに黒江的ポジションからの結論を述べておきますと…
黒江的好み度は“C”前後(“B-”に入るか入らないか)ではありますが、音質という面ではかなり高く評価したいモデルです。
もちろん、価格(定価71,400円)が価格ですので『100万円クラスと聴き比べても引けを取らない!』なんてことは言いませんが、お好みに合えば倍近くの製品よりも魅力的なサウンドに感じられる方がいらっしゃっても何ら不思議ではないくらいに『サラッとさりげないハイクオリティ』なサウンドの印象です。

「サラッとさりげない」とある通り、音は比較的スッキリ系で、滑らかに・しなやかに・緩やかにといった濃密さを感じさせるサウンドではなく、(ちょっと他の方とは意見が異なるみたいですが、)いわゆるラックストーン(ラックスマントーン)・ラックスサウンド(ラックスマンサウンド)とは異なる癖の少ないサウンドの部類に入ると思います。

具体的には…
●(価格的に突出したのもではないが)高いS/N感と解像度で繊細かつ丁寧に1音1音が作られている印象です。
●帯域のバランスは(黒江的には)極めて自然であり、低域が持ち上がったり、キンキンとした高音を入れ込んでくる傾向ではありません。
●ラックストーンではないと言いつつも、ややしっとりしていたり、(ややウェットな感じに)艶がかっていることからも(見出しにある通り)ほんのりとラックストーンを感じさせる“薄化粧サウンド”と呼びたいイメージです。
●スピード感は“鈍足”ではないですが、お世辞にも“ハイスピード”とは言えず、“普通くらい”といったところです。
●サウンド全体も“シャープ”とは言えませんが、緩々としているワケでもないので“ややタイト”といったところです。
●総じて、音に個性(キャラクター)を加えてくるタイプではなく“ニュートラル”“ナチュラル”といった印象の方が勝ります。
●J-POPや歌物・アコースティックなどは相性バツグンだと思います。

…と、ここまでは注目の機能である『デジタルフィルター』をデフォルトの“df1”(FIR)で聴いた印象なのですが、“df2”(IIR)に切り替えると…
●しっとり感・ウェット感などが抑えられて、音抜けが1抜けも2抜けも向上します。
●音がシャープになり、ちょっとエッジが立ってビシッとしたサウンドに傾きます。
●ギターの歪みやシンバル、シャウト系のボーカルのザラザラ感といった分解系のサウンドが鮮明になります。
(悪く言えばスカスカした感じ、粗っぽくなった感じとも言えますが、これにスピード感が加われば黒江の好み度は一気に“A-”くらいまで上がりそうな感じです。)
●今時の疾走系メタルはちょっと無理そうですが、ハードロックやトランス、テクノなどあまり速すぎないサウンドであれば気持ち良く聴けそうです。
(“df1”(FIR)を“薄化粧”と称するなら、“df2”(IIR)は“(近所で見かけるような=お高くない)すっぴん美人”とでも呼びましょうか。)

…ということで、聴いてみる前は「大人向けのサウンドかなぁー」と思っていましたが、『デジタルフィルター』のおかげもあって10代~40代くらいまでの「J-POPやロックが好きな世代」にもオススメしやすい1台です。
黒江自身も「歌物を中心で聴く時用に1台買おうかな…」と思ったくらいですので、ぜひ「はじめての1台に」「2台目のサブに」と、ご検討いただければと思います。