さすがに12月は忙しくて遅筆気味になっておりますが、『PCオーディオ/ネットワークオーディオレポート』をお送りします。
まず、PCオーディオ/ネットワークオーディオという分野では『音質(クオリティ)・音色(傾向)』と『使い勝手・設定・操作性』の2つのセクションで製品のレポートを書くことが出来ますが、1つ1つのアイテムを一気に書いていくのは(時間的に)厳しいので、まずはいきなり(スクランブルテストの)総評から入ってみようと思います。
総評は「USB接続でPCオーディオとして使用したケース」と、「NASを使ったネットワークオーディオとしてのケース」で大きく2つに分けて書きます。
(marantz NA7004のように)双方の機能を持っている機種に関しては両方のレポートに登場してきますので合わせて参考にして頂ければ幸いです。
第1回目の今回はUSB接続でのいわゆる「PCオーディオ」での各製品の比較試聴レポートです。
■PCオーディオ
試聴機
ORB : JADE-1
LUXMAN : DA-200
north star design : Essensio
PhaseTech DIGITAL : HD-7A
Aura : neo
marantz : NA7004
sonicweld : diverter
※すべて同じUSBケーブル(FURUTECH : GT2 USB-B)を使用して同じPCと接続し、foobar2000(Windows XP + ASIO4ALL)にてWAVファイル(もちろん同じ曲)を再生しての比較です。
まずは一覧リスト&ワンポイントでご覧ください。(先頭の◎○△×は大まかな評価です。黒江的好み度はSランク→A+ランク→Aランク→A-ランク→B+ランク…と続きます。)
◎ORB : JADE-1
1音1音がタイトで鳴りっぷりが良く、躍動感・ドライブ感・アグレッシブさのあるサウンド。HARD ROCKには最適だと思われます。黒江的好み度:A
◎LUXMAN : DA-200
往年の「LUXトーン」はあまり顔を出さないものの音がしっかりとしていて、高い情報量をさりげなく(押しつけがましくなく)聴かせてくれます。黒江的好み度:B
◎north star design : Essensio
シャープでクリアネスでハイスピード。キレのあるタイプが好きな方にはイチオシです。黒江的好み度:S
◎PhaseTech DIGITAL : HD-7A
USB接続時の音質(クオリティ)だけを取れば今まで聴いた中ではベストです。音の密度感や厚みがあり、音場(空間表現)も広く滑らかです。黒江的好み度:B-
○Aura : neo
CDプレーヤーとしてのサウンドと比べるとやや低重心となってキレとクリアネスが鈍るものの、切れ込むような音の飛び方、スピード感の高いサウンド。黒江的好み度:A
△marantz : NA7004
(他と比べて)多機能な上に価格が安いためか、他のものに比べるとすこしこもった感じがあり、抜け・見通しがやや悪いです。サウンドは早くも遅くも無く、硬くも軟らかくも無く…といった中庸的です。黒江的好み度:B
○sonicweld : diverter
ちょっと番外編ですが…USBを同軸デジタル(=COAXIAL[コアキシャル]またはS/PDIFと表記する場合もあります。)に変換するユニット。驚くようなスピード感とアグレッシブさですが、やや粗い感じも…。PCのスタビライザー(振動止め)にもなるとのことですが、(寸法測り忘れたけど…)Mac miniとほぼ同じくらいのサイズなのでMac miniの上に乗せたらピッタリな気がします。(サウンドもMac miniに最適化されているのかもしれませんね。)黒江的好み度:A
くどいようですが、もっとも多機能な上にもっとも安価なので仕方がないのですが、marantzのNA7004を最初に聴いたためか「(最初は)やっぱりUSB接続の音は良くない」としか思えませんでした。(marantzさんゴメンナサイ…。)
どう悪いのかと言えば「音がこもった感じ」というのが一番で、次いで「輪郭が甘い(≒音がぼやけている)」「音にキレがない」「音の粒立ちが悪い」「音の立ち上がりが丸い」などです。
(…と、これは簡単に言えば「僕の好きな音に必要な要素が少ないだけ」とも言え、逆に言えば情報量(音の濃さ・なめらかさ・音場の広さ)のあるサウンドとも言えるのかもしれません。)
更に言えば、これは音のクオリティが高かった「HD-7A」や「DA-200」においても(もちろん音がこもった感じはありませんが、)同様の傾向があって「言わばMP3やWAVを聴いているのにデジタルっぽくないサウンド」を各メーカーさんが意識的に作っているのかもしれません。
(理屈的には情報量がCDプレーヤーより高いはずなので、僕の感覚がおかしいのだろうと思っていましたが、その後に「Essensio」や「JADE-1」を聴いて安心しました。笑)
そんな中、「Essensio」や「JADE-1」はかなりスッキリしたサウンド傾向で特に192kHz/32bit対応で専用ドライバーを使用するEssensioには目を見張りました。
JADE-1は「USB音源としてかなり力を入れている」というメーカーのPR通り、例え低ビットレート(128kbps)のMP3であっても高いS/N感と音数が秀逸で“不可逆圧縮”(=元の状態に戻せない圧縮方式)とは感じさせない再現をしつつ、音の輪郭や立ち上がり、芯の失われないサウンドを聴かせてくれます。
(黒江的に)そのJADE-1の更に上をゆくのがEssensioで、スピード感・鮮度感・切れ・定位・S/N感と兎にも角にもイチオシです。
…と、今回の試聴機器の総評ですが…
USB接続での音質の高さだけを単純に述べれば「HD-7A」と「Essensio」が頭一つ抜き出ている印象で、次いで「DA-200」と「JADE-1」でしょうか。
クラシックやボーカルものを好まれる方は「DA-200」「HD-7A」を、ROCK・POP系の方は「JADE-1」を、METAL派には断然「Essensio」ですね。
更にヘッドホンでの使用が多い方は「DA-200」「JADE-1」のヘッドホン出力の音質が抜きん出ています。(下手なヘッドホンアンプを買うよりも高音質かも…。)
CDプレーヤーにUSB-DACという事であれば(今回の候補機でSA8004などを除けば)「neo」の一択となりますし、インターネットラジオ・ネットワークオーディオと多機能が欲しい方は「NA7004」となると思います。(NA7004のUSB出力も十分に高音質で酷いというワケではありません。…念のため。)
…と、こんな感じで、選び甲斐のあるラインナップとなっております。
PCオーディオ(≒USB音源)にご興味・関心のあります方は黒江に気軽にお問い合わせください。